2012年3月15日

出産のクライマックス

産婦人科研修で、経腟分娩は何度となく見た。正直な話、他人の赤ちゃんが出るところを見ていて感動することはなかった。将来の妻の出産には立会いはしても、腟部は見たくはないと思った。毎月生理のある女性と違い、血を見慣れない男性にとって、あの血がどくどくと流れ出る光景はショッキングだ。

出産は本当に大変なものだ。妊婦の悶絶する姿を見ると、本当に戦慄してしまう。男には、絶対に耐えられない。壮絶で、生々しくて、神秘的なものなど何もない。男にできることは、痛みに苦悶する妊婦を励ますだけだ。

しかし、である。

赤ちゃんが生まれ出て、その赤ちゃんを見た瞬間の母親の笑顔というものは、本当に素晴らしい。あの瞬間の笑顔は、女性が一生の中で見せる中で最高の笑顔だと思う。出産をグロテスクだと思っている俺でさえ、あの笑顔には毎回感動した。産婦人科医になる人は、あの笑顔が見たくてなるんじゃないだろうか。それほどまでに、素晴らしい笑顔だ。出産そのものはまったく神秘的ではないけれど、あの瞬間の女性の笑顔こそは神々しくて神秘的で、究極の美だと思う。

だから、立ち合い分娩を希望する男性は、とにかくその瞬間の妻の表情だけは見逃さないようにして欲しい。赤ちゃんをビデオに撮るのに熱中しすぎて、あの笑顔を逃したら大損だ。出産のクライマックスは、赤ちゃんの誕生ではない。出産直後の女性の顔は、苦悶の緊張から安堵の緩みを経て、赤ちゃんを慈しむ笑顔へと変化していく。あれこそが、出産のクライマックスなのだ。



残念ながらサクラの出産には立ち会えなかったので、妻の最高の笑顔は見ることができなかった。それはちょっと心残りではある。

5 件のコメント:

  1. そんなに血が出るんですか・・・
    想像だけで痛みと血にビビりそうです。

    返信削除
    返信
    1. >あっこ
      痛みはともかく、女性は血は見えないから大丈夫!!

      削除
    2. 3回とも全身麻酔で帝王切開だったわたしは出産の瞬間に立ち会えなかったし、姑やほかの人からも「へえ,帝王切開だったの。陣痛の痛み知らないの。楽して生んだんだね」とか言われてずっと肩身が狭かったです。確かに苦しい思いをして生んだあとの表情はすばらしいかもしれませんが、世間には帝王切開で出産した女性に対して冷たいことをご存知ですか?特に自然出産を推奨する医師や助産師には母親失格のように言われます。あんまり経膣分娩を賞賛しないでくださいね。

      削除
    3. >ぺんたさん
      経腟分娩と帝王切開を比べて、経腟を賞賛する意図は全くないです。帝王切開で生まれた子が我慢弱いという謂われない偏見があることや、無痛分娩に反対する風潮も知っています。
      しかし、この文章を読んで経腟分娩を賞賛していると思われるのであれば、それは全くの誤解です。

      削除
  2. がんばります(涙)

    返信削除

コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。