2013年1月12日

風に鳴る押入れ

今朝、まだ暗い外では風が強く、すきま風が押入れの戸を鳴らした。寝床の中でその音を聞くともなしに聞きながら、ふと祖父の家を思い出した。

子ども時代の多くの時間を、俺は祖父の家で過ごした。幼い俺の記憶に残っているだけでも結構多いが、親戚の誰もがそう言うから、本当に長い時間を祖父の家にいたのだろう。そんな祖父の家も、風が吹くと押入れの戸が鳴っていた。時には、夜中に寝つかない孫を大人しくさせるため、こっそりと(そう祖父は思っているがバレている)自分の手を押入れに伸ばしてガタゴトと戸を鳴らし、
「アモウが来たぞ~」
と言っていた。このアモウというのは祖父独自のオバケで、後にも先にも祖父以外から同じ言葉を聞いたことがない。ネットで調べても、そんな方言はない。あれはなんだったのだろうか。

そういえば、祖父しか使わなかった言葉に「やんぐ」というのもあり、これは「汚い」という意味だが、これも他の人が使っているのを見たことがない。小学校一年生の時に、「おじいちゃん、おばあちゃんに聞いて方言を集めよう」という宿題があり、俺はこの「やんぐ」を選んだのだが、教室では誰も「きいたことなーい!!」と騒ぎ、先生すらもが、
「それは若いって意味の英語だよ」
という始末。ちなみにこの先生は、『チェーン・ソーの思い出』にも出てきた女性教師で、あまり良い思い出がない。それはともかく、この「やんぐ」もやはりネットで見つからない。祖父がどこでどうやって身につけた言葉なのか、祖父亡き今、確かめる方法はない。満州にいた時代があるので、そこで覚えたのだろうかと考えたこともあるが、これもまた確かめる方法を思いつかない。

空が徐々に白んできた。風はまだ強く吹き、時どき押入れが鳴っている。ガタゴト、ガタゴト。アモウが来たのかもしれない。もうすぐ祖父の一周忌。押入れを鳴らしているのが、祖父のアモウだったなら嬉しい。

今日は、実際の祖父の命日より一足早く、実家で一周忌の法要が営まれている。俺は仕事で参加できないが、ここでこうやって祖父を偲ぶことにする。

7 件のコメント:

  1. 同世代の者で、読書感が大変参考になるので時々ブログ拝見させて頂いております。
    長崎地方で幽霊を子供向けに「あもよ」と言うことがあるそうなので、ご祖父もそちらのご出身か、ご出身の親族がおられたのでは・・・。
    http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/dialect/3264/m0u/

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    1. >匿名2013年1月13日 23:00さん
      ありがとうございます!! 長年の疑問が一つ解けました!!

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  2. そういえば、川棚では「あもよん」は「うらめしや~」という意味でした。

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    1. >shin
      まじか! ちょっと調べてみる!!

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    2. >shin
      調べたけれど、見つからなかったっす!!

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    3. あれ?川棚出身の母が言っていたんですが・・・
      母に確認してみます!!

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    4. >shin
      「川柳」と誤読していた……。

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