2014年10月4日

ザッとで分かる恐怖のエボラ出血熱

マスコミがバカ騒ぎしているデング熱、デング出血熱なんかとは比べ物にならないくらい恐ろしいエボラ出血熱(以下エボラ出血熱、エボラウイルスなど煩雑なのでエボラのみと記す。文脈で出血熱かウイルスか判断されたし)について、医療従事者でなくてもザッとで分かるように書いてみたい。
  • エボラの死亡率は良くても50%、悪いと90%。
    今のところ認可された治療法はない。現在、未認可の治療薬が緊急性を考慮して使用されているが効果や副作用のデータは乏しい。
  • 「空気感染しない」は安心材料ではない。
    エボラは接触感染が主で、感染者の体液に触れることで感染する。そして「空気感染はしない」ということが安心材料のように言われているが、空気感染とは「飛沫が約1メートル以上を伝わって感染する」ことである。エボラはインフルエンザのように飛沫感染(咳やクシャミで飛ばされる飛沫による感染で、範囲は感染者から約1メートル)する可能性が示唆されている。毎年インフルエンザが流行することを思い出してもらえれば、飛沫感染の恐ろしさがよく分かると思う。
  • エボラは、感染者のあらゆる体液中に多量に含まれる。
    この体液とは、精液、血液、唾液など、いわゆる「濃厚な接触」を必要とするものだけでない。小さな傷、あるいは汗にも含まれる可能性が指摘されている。
  • 潜伏期は2-21日で、症状は突発的。
    発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などを呈し、進行すると口腔、歯肉、結膜(眼球や眼瞼など)、鼻腔、皮膚、消化管など全身から出血して死亡する。この嘔吐物、便、血液には当然エボラが多量に含まれている。
  • 「症状のない患者からは感染しない」は安心材料ではない。
    上記の症状を呈した人、たとえば家で嘔吐した人は、その嘔吐物を誰がどうやって処理するのか。その後どうやって病院に行くのか。家族の車か、タクシーやバス、電車か、救急車か。病院に着いてからすぐに診てもらえるのか。待合室でまた嘔吐したらどうするのか。最初に接触する医療従事者の感染防御意識はどうか。このように、「症状のない患者からは感染しない」とはいえ、症状のある患者が医療機関で隔離されるまでに、無防備あるいは不完全な防御で接触する人たちは非常に多い。
  • 感染経路、感染力、致死率の総合評価で、間違いなく最悪のウイルスである。
    致死率の高いウイルス、感染症は他にもある。例えば狂犬病ウイルスは感染したら致死率100%だが、これは動物に噛まれなければ良い。一方のエボラは、テレビで見るような感染防御をしていてさえ、医療従事者が感染している。例えそれが不注意によるエラーであったとしても、それならなおのこと、素人である一般人がマスクや手袋をして、うがいや手洗いを徹底した程度で、適切な感染防御ができるとは考えないほうがいい。

平成26年9月30日、エボラを「発症した人」がアメリカで1名確認された(42歳男性)。

これまでアメリカでエボラ患者がいなかったわけではなく、5人程度がアフリカで発症して帰国し、アメリカで治療を受けていると言われていた。このように発症が確認されて帰国する人の場合、入国前から感染予防措置がとられる。ところが、上記男性の場合、9月20日にアメリカに到着し、それから5日ほどで発症している。エボラと確認されたのは30日である。つまり、発症してエボラと確認されるまで5日間あったということである。

この男性は発症後、9月26日に一度は病院を受診し、アフリカを訪れたことを告げたにもかかわらず、抗生剤を処方されて帰宅となっていた。致命的なエラーと言えるが、これは日本でも充分すぎるほど起こりうることである。今後、もしアメリカで小流行が起きたとして、アメリカから帰国して体調不良を呈した人を厳重に診療、場合によっては隔離的な治療をするとなれば、コンビニ感覚で利用されている日本の病院はあっという間にパンクするだろう。

なお現在、アメリカではおそよ100人が経過観察されている。この100人が、感染疑い者を100%捕捉したものであれば、今のところそう心配は要らないかもしれない。しかし、1人でも漏れがあって、その1人が実際に感染していたら、また新たに接触者100人近くを経過観察しなければならない。

あまり考えたくないことではあるが、早ければ今年中に、日本国内で感染・発症者が出るのではないかとすら危惧している……。

<追記>
世界流行したことで悪名高いスペインかぜでは、世界全体での死者が5千万人にのぼったが、感染者は6億人なので、致死率は10%弱である。この時、日本では50万人弱が死亡している。当時の世界人口は20億人である。
現在の世界人口が70億人。致死率90%のエボラがスペインかぜなみに流行すれば、20億人くらいが感染し、そのまま20億人くらいが死亡する……。スペインかぜの時の死者、世界5000万人、日本50万人の比率をここに単純に当てはめたら、日本では2000万人が死ぬ。
エボラみたいに人から人へうつる感染症の場合、人の往来が多く感染が広まりやすいけれど高度な医療技術が普及している先進国と、人の往来は先進国ほど多くはないけれど高度な医療技術もそう普及していない発展途上国と、どっちが良いんだろう?

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ホット・ゾーン 「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々

医学部に入る前、まだ会社員時代に読んだ本。あれから15年以上、人類を脅かすのはエボラだと思ってきた。だから、数ヶ月前からアフリカでエボラが流行していることについてマスコミがサラッとしか扱わず、デング熱なんかで大騒ぎしていることがもどかしくて仕方がなかった。ここにきて、ようやくマスコミもしっかり報道するようになってきたか……? エボラ報道なんか売れないと思われているということは、すなわち読者・視聴者のレベルなんてその程度だと考えられているということだろう。残念だし、悔しい。

2 件のコメント:

  1. 数年前のブタインフルの時も何だかんだ言って感染が広がりましたよね。私も感染しましたが、発症から完治まで3週間掛かりました。。。咳をし過ぎて肋骨も折れるし(涙)あの時は『死なない病気だから大丈夫』みたいな感じでしたが、身をもって他の国で発生した病気が日本に広がる速さに震撼しました。
    あの時が11月の下旬には九州に住む我が家の家族も感染していたので、今回のエボラは怖いですね。。。うちもパニックにならない程度に1回の買い物で1個ぐらいに非常食を買おうかと思います。

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    1. >ゆうさん
      ブタインフルの被害者ですか……。恥ずかしながら、そういう流行あったっけなぁ、なんて医療従事者なのに……調べてしまいました。2009年ですね。研修医が終わって精神科一年目のころかなぁ。
      3週間というのは長いですね、細菌感染も併発したのかもしれませんね。

      エボラ、アメリカのはどうやら収束したみたいですが、インドで日本人女性が発症の疑いありのようですね。まだ油断はできません。

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