2014年10月25日

悟空とアンパンマン、そして……

悟空とクリリンが旅をしている。
「もうだめだ、ハラが減って、リキが出ねぇ」
「おいおい悟空、こんなとこでヘバってどうすんだよ、亀仙人さまの家はもうすぐだぞ」
「だってクリリン、オラ、ハラペコだと動けねぇよ」
「しょうがないなぁ……」

空をアンパンマンが飛んでいる。
「困っている人はいないかなぁ……、あっ、お腹を空かせている子がいるぞ」

「!? クリリン!! すげぇ気が近づいてくるぞっ!!」
「だだだ誰だ!?」

アンパンマン、着地。
「こんにちは、ぼく、アンパンマンです。お腹がすいているんだね。僕の顔をどうぞ」
「おめぇ……、顔ちぎって痛くねぇのか?」
「ふふふ、ジャムおじさんのパンは美味しくて元気が出るんだよ」
「(質問に答えてねぇな……) !?」
「悟空……、こいつの気が……」
「あぁ、小さくなっちまった……」
「ぼくは、顔が欠けると力が出なくなるんだ」

そんな3人を陰から見つめる男2人。
「コマツ、ついに見つけたぞ!」
「トリコさん!!」
「あぁ、最高のアンパンだ」
「捕獲レベルは?」
「噂では1万を超えると聞いていたが……、今なら3ってとこか」

「!? クリリン、あっちにもすげぇ気が」
「あぁ、分かってる」
「ふふふ、君たち、強そうだねぇ。ところで、気ってなんのこ……」
「100連釘パンチ!!!」
コロコロコロコロ……。
「あっ、アンパンの顔が!! おめぇ、なんてことしやがる!!」
「ぼくたち、最高の食材探しをして旅をしてるんです」
「食材って、おめぇ……」
「あ、申し遅れました。ぼくは料理人のコマツで、この人は美食ハンターのトリコさんです」
「コマツ、お前の腕前、見せてやれよ」
「はいっ」

30分後。
「いただきます!!」
「うめぇぇぇぇぇぇ!!」
「やっぱコマツにかかると、食材のパフォーマンスが100%引き出されるな」
「(いや、アンパンちぎって食べてるだけじゃねぇか)」

そんな4人と食材を遠くで見つめるバイキンマン。
「(ガクガクブルブル)ハヒフヘ震える……。ヤバいって……。ジャムおじさんに知らせなきゃ……」

バイキンマンからの報せを受けて、アンパンマン号で駆けつけるジャムおじさん、バタ子、チーズ、食パンマン、カレーパンマン。

「アンパンマン、新しい顔よ!!」
♪テッテレテレッテッテー、テテテ、テッテレレ、テッテレレ、テー♪
「元気100倍、アンパンマン!!」

「悟空!! アンパンの気が!!」
「あぁ、分かってる。オラ、わくわくしてきたぞ」
「トリコさん……」
「捕獲レベル1万か……、コマツ! さがってろ!!」



悟空、クリリン、トリコ vs アンパンマン、食パンマン、カレーパンマン



八奈見乗児 「こうして、ジャンプ対フレーベル館の熾烈な戦いが始まるのだった」

決められない患者たち‏


非常に面白かった。医師にも一般の人にも勧めたい本だが、1冊3500円はあまりに高い。よほど本好きで興味がある人でないと買わないんじゃなかろうか。とても良い本なだけにもったいない。

2014年10月24日

デング熱対策のために遺伝子組み換え蚊を導入!?

デング熱を媒介するネッタイシマカへの対策として、遺伝子組み替えを受けたオスの蚊(GM蚊)の話がラジオで取り上げられた。これはイギリスのバイオ関連企業オキシテックが開発したもので、この遺伝子組み替え後のオスと普通のメスとが交尾すると、孵ったボウフラは成長できずに死滅するのだ。これを紹介していた人は、海外では次々と導入されているもので、日本でも早急に取り入れるべきだと言っていた。

これは怖い。いや、怖いというより、少なくともデング熱を意識した対策としては、リスクとベネフィットが釣り合っていない。遺伝子組み替えをした蚊を解き放った後、蚊の激減が生態系にどのような影響を与えるかも未知数であるし、その他どういうことが起こるのか分からない部分が多すぎる。

蚊が媒介する病気には死亡率の高い日本脳炎をはじめ、セントルイス脳炎ウイルス、マラリア、その他あれこれたくさんある。それぞれで年間の発生数、不顕性感染(感染しても症状が出ない)の割合、死亡率などが異なる。こういう要素を考慮に入れて、GM蚊を野に放つリスクより、蚊を大幅に減らすことのベネフィットが勝ると判断できれば、この方法は推奨できる。ただし、徹底的に吟味したうえでの判断でも、50年後、100年後に「あれで正しかった」と評価されるかは分からない。

少なくとも日本におけるデング熱対策としては、このGM蚊の導入はやりすぎであり、危険だ。仮に重篤といわれるデング出血熱でも、死亡率は1%。それも、あるタイプのデング熱に感染し、回復した後さらに別のタイプのデング熱に感染することで発症するのだから、日本でデング出血熱を発症するのは稀中の稀である(頻度としてはデング熱患者10万人のうち出血熱になるのが250人。そしてそのうち、死亡するのが2-3人)。これがたとえ死亡率の高い日本脳炎(媒介はコガタアカイエカ)の対策だとしても、やはりリスクとの釣り合いが取れていない。国内での日本脳炎の発症者は2013年に9人で、ワクチンもあるのだから。

東南アジアなど、蚊による感染症が猛威を振るっている地域で導入するならまだ理解できるが、それでも、もしかすると蚊が生態系でキーストーン的な位置を占めている可能性だってある。蚊が激減した変わりに、もっと有害な生物が大繁殖しないとは誰も言い切れないのだ。

<参考>
Wikipedia 不妊虫放飼 ネッタイシマカ対策

精神療法は完璧な人を作ることを目的にしてはいない

人工産物である精神療法は、まぁまぁ生活できるようにすることを目的にしており、完璧な人を作ることを目的にしてはいない。人は、実人生の経験を通して成長するのが自然である。
神田橋先生の本『対話精神療法の初心者への手引き』より。

2014年10月23日

「平均」の難しさ 『統計という名のウソ ― 数字の正体、データのたくらみ』

このブログの読者であれば、一般的な「平均」の計算は分かるだろう。

社長も含めた従業員が100人の会社があるとする。労働者は90人いて年収200万円のブラック、管理職は9人いて年収1000万円、社長は年収1億円とすると、この企業の「平均年収」は370万円になる。企業の90%の社員が年収200万円なのに、平均は370万円になるのだ。こういう場合の平均(相加平均)はあまりあてにならない。

そこで中央値を見ることにする。これは少ないものから順に並べて、真中のものを選ぶのだ。そうすると、この企業の場合、50番目と51番目はいずれも年収200万円だから、中央値は200万円ということになる。これは確かに実情に近い。そのかわり、ここでは搾取している側の年収1000万円と1億円という情報が失われる。

このように、「統計」というのは「まったくの真実」ではなく、「誰が、どんな意図をもって、いかなる基準で選んだものをどういう方法で数え、さらにどうやって提示するか」といったことに大きく左右される。そこには上記のように失われる情報が必ずあるということだ。

統計という名のウソ ― 数字の正体、データのたくらみ

統計に関する良書である、と書くと、なんだか難しそうな本だなぁと思われそうだが、そんなことはない。難しい式や概念はほとんど出てこない。そういう専門書ではなく、統計・数字というものを見る時の心構えのようなものが示されている。

2014年10月22日

アメリカがエボラと国内でガチンコ勝負するのは、実は2度目である

今回のエボラ流行において、アメリカではリベリア帰りで体調不良を訴える男性に抗生剤を処方して帰宅させたり、その男性の看護にあたった看護師が2名感染したり、さらにはそのうち1名が発熱しているにも関わらず飛行機に乗ったりと、一歩間違うとシビアな結果になったかもしれないエラーがいくつかあった。アメリカ国内において、今後も似たようなエラーはあるかもしれないが、きっとその都度システムを修正して穴を塞いでいくのだろう。実際、今回もわりと素早く見直しが行なわれているようだ。

実は、アメリカが国内でエボラと対決するのは今回が初めてというわけではない。エボラの5種類のタイプのうち、レストン・エボラ(以下、レストン株)というのはアメリカ国内で発見されたエボラウイルスで、レストンというのはそのウイルスが見つかったワシントン郊外の街の名前である。

アメリカがレストン株と戦ったのは、1989年のことである。レストンの街に、モンキー・ハウスという建物があった。海外から輸入されたサルに感染症がないかを確認するために、一定期間モンキー・ハウスで保管するのだ。そしてそこでサルたちが大量に死亡したため、陸軍の研究所が調べた結果、エボラ株の中でも最凶のザイール・エボラ(致死率90%)に酷似したウイルスによるものだと判明した。

結論から言えば、これがレストン株であり、後々の調査で人間への病原性はないと分かったが、当時の軍関係者とCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の職員はそんなことは知らない。目の前に、ザイール・エボラか、それに似た凶悪なウイルスによるサルの大量死という事実だけがあったのだ。この時点では、関係者の多くが人間への感染・流行を想定していた。まさにエボラとのガチンコ勝負であり、非常に危険なバイオ・ハザードとして、防護服を着た獣医や軍人がモンキー・ハウスを厳重警戒で完全消毒(生き残っている大量のサルを安楽死させることも含む)したのである。またこの際、マスコミ報道によるパニックを避けるため、現地までは私服で移動するといった小さな工夫も施された。

国として、この経験は大きい。

今回のアメリカでのエボラ騒動は、ヒトでの犠牲者こそ初めてだが、アメリカとしては2度目の戦いということになる。そんな経験者であるアメリカにおいてでさえ、最初に述べたようなエラーが起こるのだ。エボラ初体験の日本でエボラが発生した場合、マスコミによるパニック誘発も含めたエラーは必ず起こると考えておいたほうが良い。「完璧にやれば完璧に対処できるシステム」というのは、「完璧にやれば」という前提が崩れると脆い。そうではなく、エラーを吸収できるようなふところの広いシステム、つまり「多少のエラーがあっても結果は完璧になる」というのが理想である。今のところのアメリカのシステムは、犠牲者が1人出たものの、うまくエラーを吸収しているように思える。

ホット・ゾーン-「エボラ出血熱」制圧に命を懸けた人々

こんな小説を書く人がいたのか!! 『know』


こんな小説を書く人がいたのか!!

少し前から気になっていた小説家だが、amazonで見る限り評価はけっこうバラバラだし、当たりハズレがあるタイプの作家なのかもしれないが、少なくとも本書は当たりだ。

念のために書いておくと、近未来の日本を舞台にしたSF小説である。時どきSF小説を毛嫌いか読まず嫌いしている人がいる。実は俺もそうだったが、実際に読んでみると、舞台をSFにしただけで、本質的には人間を描いている小説が多いことに気づかされた。良いものですよ、SFも。

オススメ。

2014年10月21日

感染宣告


2009年2月、東京・新橋にあるマンションの一室で、HIV感染者が集まる乱交パーティーが開かれると聞いた。

この衝撃的な一文から始まる、石井光太のルポタージュ(?)である。クエスチョンマークを付けたのは、一人称小説のような書き方をされている部分もあることと、もともと石井のルポには「ちょっと話を盛ってない!?」と言いたくなるようなところがあるからだ。

とはいえ、本書の面白さに変わりはない。読んで良かった。

2014年10月20日

人間の尊厳 - いま、この世界の片隅で

人間の尊厳 - いま、この世界の片隅で
フォト・ジャーナリズムの面白さを再認識した。

もともと19歳でカメラを始めたのは、長倉洋海の新書『フォト・ジャーナリストの眼』でフォト・ジャーナリズムの世界に憧れたという理由もある。昔から絵は苦手だったが、文章を書くことは大好きだった。そんな俺にとって、写真を撮ってそれに文章を加えるフォト・ジャーナリズムは、新鮮かつ魅力的に思えた(当時はネットもないし、今ほどフォト・ジャーナリストがテレビに出ることもなかったのだ)。

今回、改めて写真と文章の融合で伝えることの凄さを感じた。自分には、長倉洋海や本書の著者である林典子のような根気や度胸はないので、とうていフォト・ジャーナリストになんてなれなかっただろうが、久しぶりに胸が高鳴るような読書だった。

2014年10月17日

高熱隧道


吉村昭の「小説」である。読み終えるまでずっとノンフィクションだと思っていたが、ブログを書く前に調べて知った。史実に基づいてはいるものの、登場人物・団体は仮名とのこと。

どうりで……。

「実際に現場を見たかのような迫真の描写」

というのをここでの紹介文句にしようとしていたくらいなのだが、「小説」であれば吉村昭の脳内で実際に繰り広げられた場面であり、それを吉村昭の筆力で描けば迫真性があるのは当然のことであった。

一気読み。

余談ではあるが、隧道はズイドウと読む。

2014年10月14日

音楽と人間の脳の不思議なつながりを感じるエピソード

4歳か5歳のころ、保育園でバスに乗って遠足に出た。同伴した親らが、バスのマイクで童謡や歌謡曲を歌っていると、子どもの誰かが泣き出した。それを大人たちが一生懸命になだめていた。
「そんな泣かなくても良いのよ、哀しい歌じゃないのよ」
それは、こんな歌い出しだった。

「春を愛する人は心清き人」

曲名は今調べて知ったのだが『四季の歌』。確かに歌詞は決して哀しい内容ではない。



5歳の子どもに感じとれたのは、短調の音楽のもつ悲しい響きである。このことを思い出すたびに、音楽の持つ力、というか、音楽と人間の脳との不思議なつながりが面白く感じられる。

音楽嗜好症(ミュージコフィリア)―脳神経科医と音楽に憑かれた人々

2014年10月10日

パインズ -美しい地獄-


今年3月に邦訳されたばかりのアメリカ人作家による小説。
前知識がまったくなくて読むほうが面白いと思うので、amazonの紹介文だけを引用しておく。
川沿いの芝生で目覚めた男は所持品の大半を失い、自分の名さえ思い出せない。しかも全身がやけに痛む。事故にでも遭ったのか……。やがて病院で記憶を回復し、みずからが捜査官だと思い出した男は、町の保安官や住民に助けを求めた。だが、この美しい町パインズはどこか狂っていた。住民は男が町から出ようとするのを執拗に阻み続け、外部との連絡にも必ず邪魔が入る――絶対予測不能の衝撃のラスト!
日本語として変な訳もなく読みやすかったし、内容的にも面白かった。訳者あとがきによると、シャマラン監督によってドラマ化されるらしい。確かにテレビドラマに向いているような展開だった。

2014年10月8日

ルポ 最底辺 不安定就労と野宿

ルポ 最底辺 不安定就労と野宿
著者は、同志社大学に在学中から釜ヶ崎へ出向いて野宿者へのボランティアを始め、また自ら日雇い労働に従事してみて、野宿者らの支援を考え続けている。そんな著者だけあって、かなりしっかりした文章である。

が、しかし、である。

もう少し個々の野宿者の生活歴に迫って欲しかった。時おり記述があるものの、それは著者自身のものではなく引用が多かった。もう少し個人にスポットを当てたものが読みたかった俺としては若干不満の残る読後感。

2014年10月7日

カシオペアの丘で

カシオペアの丘で 上

不思議なものだ。

この本はもう5年程前に買って、ずっと本棚に置きっぱなしだった。いい加減に読もうと思ってページを開いて驚いた。主人公は39歳、俺と同じ歳だった。それから舞台となる季節が初秋から冬で、本を読み始めたのが9月17日。

そういえば、重松さんの『かあちゃん』では、話の軸となる主人公の母親が還暦で、俺の母もその本を読んだ年に還暦を迎えた。あの時も本と自分との不思議な縁を感じたものだった。

本好きには分かると思う。
本とのこういう出会いは、決して珍しくないのだ。

夜の洗濯物

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2014年10月6日

静かなマウスが心地いい

午前4時過ぎから活動開始することもある超早朝派の俺にとって、マウスのクリック音はけっこう気になることだった。そこでネットで調べて見つけたのがコレ!!

ものすごーく静か。さらに素晴らしいのが、位置読み取りのブルーLED。我が家のノートパソコンは、真っ白なテーブルの上に置いてある。これまでの光学マウスでは反応がかなり鈍かったので、仕方なくその辺のチラシなどをマウスパッドがわりにしていたのだが、このマウスはそのテーブルの上でもスムーズに動く。これは感動もの。

2014年10月1日

潜水服は蝶の夢を見る

潜水服は蝶の夢を見る

脳出血によってロックトイン・シンドローム(locked-in syndrome)となってしまったフランス人男性が「書いた」本。彼は雑誌『ELLE』の編集長だったが、43歳の時に突然脳出血を発症したのだ。

ロックトイン・シンドロームは、顔面や四肢が麻痺して発語不能になる。意識障害ではなく運動障害で、意識が体に「閉じ込められた」状態になる。まばたきや垂直方向の眼球運動による意志疎通は可能だ。「はい」ならまばたき1回、「いいえ」なら2回といった具合に。

この本は、著者が20万回以上のまばたきで書き上げたものらしい。どうやるかというと、アルファベットをフランス語で頻繁に使われる順に並べたものを用意し、聞き手が1文字ずつ確認していくのだ。そして著者が意図した文字に来たところでまばたきをする。

なんて気の遠くなる執筆活動だろう!!

著者はフランスで本が発売された2日後、感染症による合併症で他界したそうだ。2冊目を「執筆」する予定もあったらしい。本書が面白かったかどうかというより、そのバイタリティに胸を打たれた。