2015年1月23日

質の異常と量の異常

病気は、大きく「量の異常」と「質の異常」に分けられる。

糖尿病、高脂血症、高血圧、良性腫瘍などは量の異常の典型例で、これらは薬を飲むなり手術をするなりして、量を適正に戻すことが治療になり、多くの場合それで改善させることができる。放っておくと危ないが、コントロールはしやすい。

質の異常は、例えば眼科の網膜色素変性症、アイスバケツで有名になった筋萎縮性側索硬化症や多発性硬化症などの神経疾患などがあり、量の異常よりは治療に難渋する、あるいは治療法がないことも多い。また、癌は質の異常をもった細胞が量的に異常増殖する重大事態である。

では、精神科における「量の異常」と「質の異常」はどうか。「落ち込み」と「気分高揚」で考えてみる。

たとえば、嫌なことがあって落ち込みがひどい、あるいは嬉しいことがあって異様なほどはしゃぐ、といったことで精神科に来る(連れて来られる)人がいるが、これは「量の異常」だろう。身体疾患と同じで、放っておくと危ないかもしれないが、診察時点で心配しすぎる必要はない。また、もともとの性格的なものも関与している場合などは、身体疾患と違ってコントロールが難しいことも多い。

その逆、嫌なことがあったのにテンションが上がった、あるいは嬉しいことがあったのに喜べない、という「質の異常」は何らかの精神疾患による躁状態やうつ状態を示唆し、早期の精神科的な治療介入が必要である。ただ身体の質の異常と違って、これらは薬への反応がわりと良いことが多い。

その病気が「量の異常」なのか「質の異常」なのか、あるいは両方を備えたものなのか。心身両方の病気をそういう視点で考えてみると、またあれこれ違ったアプローチ(患者説明の仕方、薬の選び方、生活指導の仕方など)が見えてくるんじゃないかな。

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