2015年2月27日

可愛い子には旅をさせろ、たとえそれが家の中であっても良い

引きこもりの若い患者を養育している祖母が、ある日の外来でこう嘆いていた。

「可愛い孫だからそれはもう心配でたまりません。日中も一人にさせられない。だから私は趣味のゲートボールにも行かず、ずっとつきっきりなんです。そうすると、私が家を出られなくてストレスがたまってしまって……」

これを聞いて、咄嗟に「可愛い子には旅をさせろ」という言葉が頭に浮かんだ。しかし、引きこもりの若者は旅に出てくれない。だったら、どうするか。

「おばあちゃん、『可愛い子には旅をさせろ』という良い言葉がありますね。おばあちゃんの可愛いお孫さんが家を出ようとしないのなら、おばあちゃんが積極的に家から外に出ましょう。そうすれば、本人は家にいながら一人旅することになりますよ。本人にとっても、おばあちゃんにとっても、一人になれる時間は大切ですから」

彼女は、
「これからはもっとゲートボールに参加します」
と笑って帰っていった。


こんな例え話を思いついたのは、
「引きこもりとは、内に向かった家出である」
という言葉が頭のどこかに引っかかっていたからである(※)。この言葉は、『ドラマで泣いて、人生充実するのか、おまえ。』という本に書いてあって印象に残っていたものだ。

家出した子どもに付き合って自分も家を出るなんて親はいない。もし親がそんなことをしてしまったら、その子は家出をしたことにならないし、悩みや葛藤や怒りの発散にもつながらない。これの裏返しで、内に向かった家出(引きこもり)をしている子と一緒になって、家族が内に向かって家出をしてしまってはいけない。


※たくさん本を読めば、それだけたくさんの大小さまざまなフレーズが頭に引っかかる。普段は気にしないようなそれらのフレーズが、ふとした瞬間に活き活きとした形になって自分の言葉や文章となって再生産される。そんな時に得られる快感が、また次の読書へと駆り立ててくれる。

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