2015年3月9日

精神科は、患者にとっての杖でありたい

摂食障害という診断で精神科に5年くらい通っていて、前主治医から引き継いで2年近くになる女性がいる。初診時は内科入院の検討が必要だった体重も、今では「やせぎみ」程度をキープできている。そんな彼女から、
「なんだかんだで食べられるようになった。でも今は、精神科の薬が効いているかどうか分からないので、できれば減らしていきたい」
と相談された。そこで、途切れ途切れではあるが、以下のようなことをお伝えした。

「精神科の薬も診察も、杖みたいなものです。杖に効く効かないはないですよね。あなたの病気は足のケガと同じで、ある時期には杖が必要だったけれど、時間がたって必要なくなるということもあります。もちろん、杖なしではフラついたり、もしかするとまた転んでしまうかもしれません。それでも、フラついては立てなおし、転んでは立ちあがる、というのを繰り返すのが人生というものかもしれません。今こうやって、あなたが独りで立って歩いてみようと思われたのはすごく良いことだと思います。今後は少しずつ薬の量を減らしていって、最終的には精神科から卒業という方向で進めていきましょう。ただし、焦らずに」

精神科の患者にとっての「杖」とは、薬だけではない。診察室での医師との関わりはもちろん、入院やデイケアでのスタッフとの人間関係、あるいは患者同士の関係も「杖」となる。医療者としては、その人にとって必要な「杖」を快適に提供できれば最高である。また、不必要だからといって「杖」をむやみに取りあげるのではなく、できればさりげなく遠ざけていくような配慮も大切である。それから、生涯にわたって「杖」を必要とする病気があるのも確かだ。

そして、地味だし些細だし医師は一見なにもしていないようなのに、患者がいつのまにか元気になっていて、皆から「これは治療の結果というより、本人の持つ自然治癒力のおかげなんじゃないのか」くらいに思われるのが俺の理想でもある。

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