2015年3月17日

患者や家族から贈り物をもらうことが増えた

同じ病院で勤務して、もうすぐまる5年になる。そしてこの1年間、患者や家族から贈り物をもらうことが格段に増えた。ただし、金銭は受けとらず、また入院患者の家族からの場合はなるべく断るようにしている(※1)。いただくものは主にお菓子だが、時にサツマイモ、シイタケといった農産物、イカ、ウニといった海産物、ジュースやチョコやマフラーなどの購買品もある。

これらは同じ患者や家族と5年つきあった結果、親しみを感じてもらっているからだ、ということであれば話はシンプルなのだが、そうでもない。というのも、付き合いの短い人たちからも頂くことが増えたからだ。

この現象について考えてみたが、きっと俺自身の診療能力が上がった、つまり名医になったからだ、という結論は短絡的である。確かに1年目、2年目より腕は上がったかもしれないが、贈り物をそう頻繁にもらえるほどのレベルアップは自覚していない。

ではどうしてかというと、おそらく「医師が土地に馴染んだ」ことの影響が大きいのではなかろうか。たとえば喋るときには土地の方言がかなり混じるし、イントネーションはほぼ完全にこの土地のものになっている。そういう些細な要素が絡まり合って、俺を「土着の名医」のような存在にしてくれているのかもしれない。

だから、数年後に俺が転勤した場合、その病院で今のように贈り物をもらえるようになるにはきっと5年かかるのだろうと思っている。それまでは、精神科医としての経験年数がそれなりにあったとしても、「その土地の医師」としてはきっと未熟者なのだ。

そんなことを考えていると、ふと先輩K先生の仰った言葉が甦る。

「医者ってのは、患者さんに育ててもらうもんだ。伸び悩んでいるなぁと思う時、なぜかその壁を超えさせてくれる患者さんがやって来る。真面目にやっていれば、そうなるんだよ」(※2)

※1 特に高齢者の入院直後に金銭を持ってくる家族が多く、そこには「なるべく長く置いてください」という賄賂的な意味合いが込められているような気がする。そうではなく、たとえ純粋な感謝だとしても、受けとるこちら側が「もう少し入院させてあげなきゃかな」と余計なことを考えるようになりそうなので、入院家族からの贈り物は受け取らないようにしている。

※2 いつか電子書籍でも出せたら良いなと夢物語を描いているが、そのときのタイトル候補の一つは、『わたしが出会った患者(せんせい)たち』である。


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