2015年6月3日

足を骨折しても松葉杖や車イスを拒否する、それもまたその人の生き方だ

過食や嘔吐を繰り返してしまう、いわゆる摂食障害の若い女性。食べないと決めて学校に行くのだが、頭の中は食べ物のことばかりがグルグルと渦巻いてしまう。そんな自分の状態はバカバカしいと思うのに、どうしても食べ物のことを考えることがやめられない。だからといって食べるのも怖い。

摂食障害は治療の難しい病気だが、上記の話からも分かるように強迫性障害と似たようなところがある。強迫性障害では、例えば鍵を閉め忘れていないか、ガスの元栓はちゃんと締めたかといったことが気になったり、何度となく手を洗っても汚れているような気がしたりして、それらを頭の中では「バカげている」「気にする必要はない」と分かっていてもやめられない。こういうふうに行動としてあらわれるものを強迫“行為”という。これに対して、どうしても不合理な内容や語句・文章などを考えずにはいられない強迫“観念”(強迫“思考”)というものがある。

そこで最初の話に戻るが、摂食障害の「バカバカしいと思うのに、どうしても食べ物のことを考えることがやめられない」というのは強迫観念と言って良いだろう。そして実際、強迫性障害の治療で使う抗うつ薬SSRIは、摂食障害に対しても効くことがある。上記した若年女性は、SSRIの内服をしていた時期には過食や嘔吐が見られなくなっていた。

どの本だったか失念したが、ある精神科医が、
「抗うつ薬は『まぁ良いか』と思える力を取り戻させる」
といったことを書いていた。「まぁ良いか」と思える力を取り戻すことで、うつ病、強迫性障害、摂食障害が改善するというのは、確かに説得力がある。

さて、この若年女性はそれでも「抗うつ薬は飲まずにやっていきたい」と言う。彼女なりの理由があり、それは明らかに誤解に基づいていたが、そのことは軽く指摘するに留めた。それよりも彼女の考え方、人生観、病気と向き合う姿勢を支持することにした。

「骨折しても、松葉杖や車イスなんて要らないという人がいます。はたから見ていると不便で大変だと思うけれど、そうやって頑張ってみようとするのがその人の生き方ですよね。いま、あなたがどうしても抗うつ薬を飲まずにやってみたいと言うのなら、それを私は支持します。頑張ってみましょう」

その結果、彼女は意思の力だけで摂食障害を克服した、と言えたら良いのだが、まだまだ出口の見えないトンネルの中である。

2 件のコメント:

  1. ししとう432015年6月5日 18:00

    「まぁ良いか」と思えないことの裏に、やはり完璧主義があるのでしょうか?
    家庭菜園をやることを、かかりつけ精神科医は「土を触るし、良いことだ」と言ってくれてますが、やり始めたら、土作りから・水やり・肥料と調べまくり、ストレスになってた時期がありました。
    昔、プランター菜園でシシトウを作ってた時、勤め人をしていたこともあり、野良猫対策にギトギトになり、ついに季節はずれのインフルエンザに罹りましたわ。

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    1. >ししとう43さん
      完璧主義に近いものはあるんじゃないかと思います。
      枝葉末節を切り捨てられない、というか。
      それが活かされる場と、足を引っ張る場があるんじゃないかなぁと。

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