2015年7月3日

自立支援医療の審査組織にクレームの電話を入れた

「そんないい加減な審査なんですか?」
俺がそう尋ねると、担当者は、
「いえ……、いい加減というわけではないんですが……」
そう言って口ごもった。

精神科の患者には通院医療費を補助する制度がある。これには主治医の診断書が必要で、この診断書をもとに県の担当者が会議を開き、補助対象に該当するか非該当かを決定する。診断書内容が不十分な場合には「保留」となって、主治医のもとに「もう少し詳しく、具体的に記載すべし」と返却される。

ある患者の診断書が保留として戻ってきた。その患者が初めて申請し、俺が書いた診断書が戻ってきたのなら納得できる。ところが、その患者の場合はすでに何回も継続されており、前回の診断書は県内でも有名な病院の院長である大御所のT先生が記載してサインして難なく通過している。電子カルテなので、T先生とまったく同じ内容の診断書を提出したのに「もう少し詳しく、具体的に」という理由で保留になったことが頭にきたのだ。

前回の審査が甘かったのか、今回の審査が厳しすぎるのか、毎年そんなにコロコロと基準が変わるようなものなのか。そんな腹立ちから、冒頭のように、そんないい加減な審査なのかと聞くことになった。

結局、相手側の言い分としては、「前回の審査が甘かったと言わざるを得ない」というものであった。そこで俺は、
「そういうことであれば、T先生のほうには、『前回の審査ではT先生の診断書が通ったが、実際には通るような内容ではなかった』という連絡はされるのでしょうね」
と尋ねたが、そういう予定はないとのこと。俺の追求は容赦ない。
「T先生が記載したような内容では診断書が通らないということを、T先生に教えてあげないといけないんじゃないですか? そうしないと、T先生は自分の診断書の書き方に不備があることを知らないままになってしまいますよ」
「はい……、まぁ……、そうですね……」
担当者は返答に窮し、ついに組織トップの人に取り次ぐことになった。

そこでの回答は、概ね以下の通り。
1.審査する医師は2名で、2年ごとに交替する。
2.なるべく標準化しようと努力するものの、医師の考えでバラツキが出る。
3.過去の診断書と比べることはしない(※)ので、前回通った診断書でも今回不可ということがあり得る。
4.当該患者には迷惑がかからないようにするので、なんとか訂正をして提出して欲しい。

仕方がないと言えば仕方がない、でもちょっと不満が残る、そんな一連のやり取りであった。


※これはかなり疑わしい。というのも、時どき、「前回の診断書記載では〇〇とありますが、今回は××となっている理由を明記してください」といった理由で保留になることもあるからだ。

8 件のコメント:

  1. 言葉が悪かったらごめんなさい。
    しかしその強気で頑固な いちはさんの医師としての姿勢
    素晴らしいと思います。
    優しいだけではなく時に医師は、信念のある行動や、非情だと思えるようでも毅然とした決断をしなければならないものなのですよね。


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    1. >匿名2015年7月4日 1:25さん
      ありがとうございます。
      もしかすると、俺は特に裏表というか、診察室での患者に対する態度と、院内上層部や行政などの不手際を追求する態度の差が大きいかもしれません^_^;

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  2. Ciao いちはさん
    すみません また私の行政嫌いお役所嫌いが見え隠れしそうですが、 苦笑
    こういうのを 私は昼行灯のお役所仕事。と呼びます
    昼行灯というのは あまりに作業に慣れてしまって 自分の仕事の質をより良くしようとしない人々のことです
    こういう人々には、 何を言っても馬の耳に念仏 なのですが
    私も こういう半分眠っているような人々揺り動かしたくて しばしば クレームして 彼らの甘い脇を閉めようとします
    何も言われないで これで良いのだと思われるよりは 時々は こういうことがあると シャキッとするのではないかと いう、微かな期待からです

    疲れず諦めず頑張ってください 笑

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    1. >junkoさん
      クレームというのは、ちょいちょい取り上げられるモンスタークレイマーのせいか、今の日本ではなんだか言うほうが悪いという風潮がありますが、本来は正当なクレームはしっかり伝えていくことでシステムの改善がなされていくはずなんですよね。
      クレームの価値がもう少し見直されれば良いなと思います。

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    2. たゆまず 怯まず クレームし続けるしかないと思っています

      もはや社会が何かを見直す。ことなど待っていたら 日が暮れるどころか、世紀が暮れると私は思っており、コツコツ 高らかに文句を言い続けてます

      いちはさんもがんばってください
      文句を言うって体力いるんですけどね、、苦笑

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    3. >junkoさん
      クレーム、気力・体力使いますね。
      でも、それもまた医師という職業を選んだ者の使命だと思って、コツコツやっていきます。

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  3. ししとう432015年7月8日 3:04

    これは、医療費削減の号令の下になされたものでは。
    それを担当者が愚直に実行した。
    もちろん、後で揉めないように、「自立支援の数を減らせ」と露骨に書いた文書が回ったりするのでなく、医師のやる気や体力をなくすように、書類の数を増やしたり、担当者がバカ正直に白状したような条件を新たに設けたり。
    障害者年金に関しても、同じことがなされることが予想されます。
    小泉純一郎政権の時がそうだったそうです(某精神科医・談)。

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    1. >ししとう43さん
      確かに年々厳しくなってきている印象があります。
      そしてすでに年金も厳しくなっています。同じ内容でも1級から2級に下げられたり。
      敢えて悪く書かないともらえない、でもそれって公文書偽造にならないかなぁ、とはいえこの人は年金なしじゃ生活できそうもない、など、あれこれ考えたり……。

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