2015年10月1日

精神科病棟で電子カルテを使いこなす

電子カルテにスタッフが記録した中で素晴らしいものは、そのまま自分のカルテに「A看護師の記載より抜粋」と書いたうえでコピペする。こうすることで、その人の記録が今後の治療方針にとって有用であったということを公式に残す(※1)。些細なことではあるが、スタッフのモチベーション向上にはつながるはずだ(※2)。

電子カルテ化で残念な点は、ベテラン看護師になるほどパソコンが苦手という人が多く、記載量が減るところである。これはもう悔しいけれど、どうしようもない。では、そういうベテラン看護師の仕事ぶりを電子カルテ内に引っ張り出して評価するにはどうしたら良いか。答えは簡単で、
「主治医が話しても聞く耳を持ってくれなかったが、石田看護師が対応したら患者が穏やかになった」
と個人名を出した記載をするだけである。

この方法にはスタッフを評価するという以外にも目的がある。例えば、
「看護師が注意したら患者が激怒した」
だけでなく、そこで「石田看護師が」と名指しして書けば、そのカルテを読む方にも状況の判断がしやすい。「激怒させたのが石田看護師だったら、言い方に問題があったのかもなぁ」とか、逆に「あの患者から特に信頼のあつい石田看護師でさえ激怒されたのだから、状態が悪いのかもしれない」とか、そういうところまで想像が働く。単に「看護師が」だけだとその効果はない。

病棟という舞台に「看護師」というエキストラはいない。特に精神科では、同一患者でも、それぞれの看護師によって患者の反応が異なる。だから、個人をひどく貶めるような内容でない限り、スタッフを名指ししてカルテ記載していく方が良い。このあたりの機微が分からない医師(精神科医にはいないだろうし、いないで欲しい)のカルテでは、看護師が「エキストラ化」してしまうだろう。

当初、精神科において電子カルテの導入には反発する気持ちもあったが、どうせ電子カルテでやるのなら、「紙カルテよりも読みやすい」ということ以上のメリットを見出ださないといけない。今後、電子カルテの記載を単に「自分の診療録」と捉えているだけではチームリーダーとしての医師は務まらないだろう。例えば上記のように、リーダーがメンバーの仕事ぶりをきちんと見て評価していることをさりげなく示すツールとしての活用方法もあるのだ。与えられたものをただ使うだけでは情けない。今も新たな活用法を模索中である。



読んではいないが、買おうか迷っている本。


※1 作業療法士のOさんのカルテを見て、これは素晴らしいと思ったので引用し、太字にしてアンダーラインを引いたのが最初である。その時には本文に書いたような意識まではなかったが、しばらく考えるうちにこういう活用方法に気がついた。

※2 身体科に入院中の患者が精神科に紹介になる時、看護師記録には「夜間、大声で異常言動あり」としか書かれていないことが多い。それがどういう内容なのか、例えば妻の名を呼ぶのか、誰かが殺しに来ると叫ぶのか、虫がいる蛇がいると言って騒ぐのか、もっと具体的に書くようにと指示を出したことがある。その翌日にカルテを見るとしっかり具体的に記載されていたので、指示簿に記載者の名前を挙げて「Aさんのカルテは完璧です。今後の診療に大いに参考になりました」と書いた。こういう大っぴらなことは、紙カルテの頃から身体科病棟に対してはやっていたのだが、さすがに身内である精神科スタッフには照れくさくてやりにくい。というより、うちにはこのレベルの記載ができないスタッフはいない。

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