2015年8月28日

精神科カルテについて

精神科は他科と違い、患者のことを他の人・後の人に伝えるには自らの言葉しかない。だから、特に初診では、患者の語る内容だけでなく、服装、表情、雰囲気、言葉遣い、そこから受けた自分の印象といったところまでを細かく描写して残すのが大切である。そして恐らく、小説を読まない精神科医はカルテ描写が下手か平板である。

例えば俺の外来カルテでは、初診時の患者ついてこういう描写をする。
パッと見は全体的にルーズ、だらしがない。かなり明るめの茶髪はぼさぼさで、根元から数センチが黒い。服のボタンは中途半端にとめられ、その上からところどころ薄汚れた有名ブランドの黒いベストを着ている。形の良いカーゴパンツはよれよれで、洒落たブーツもくたくたで紐の結びかたが粗雑。
表情は弛緩したような虚ろな感じで、診察机に突っ伏してダルそうに話す。口調はぞんざいで、年齢相応の礼節が伴っていない。
そこに、自分の印象・解釈を書き加える。
もともとはオシャレだが、この数ヶ月はそういうことに気が向かない様子。母の言葉もそれを裏付ける。
二回目以降の受診では、初診時の描写と見比べる。
本日は茶髪が染められ直しており、服装も全体的にこぎれい。イスにきちんと座り、言葉遣いも丁寧になっている。
特に電子カルテになって、手が疲れないし時間もかからないので、描写をたくさん細かく書けるようになった。こういう基本的なことを疎かにすると、後の医師や看護師が困る、ということはつまり、患者にとって不利益になるということだ。

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