2015年9月7日

聴覚を失うと、視覚が鋭敏化する 『手話の世界へ』

「視覚と聴覚について」という記事で、視覚を失うと聴覚が鋭敏化するが、聴覚を失っても視覚が鋭敏化することは少ないということを書いたが、これは完全に誤りだった。

言語獲得前に失聴して手話を使う子ども(以下「ろう者」とする)と、健聴児とを比較した実験がある。香港で行なわれたもので、それぞれのグループに実際には存在しない「漢字もどき」を素早い光のパターンで示し、それを再現させたところ、明らかに「ろう者」のほうが好成績であった。同様の試験を、漢字をまったく知らないアメリカの成人「ろう者」と成人健聴者で行なっても、やはり「ろう者」の成績のほうが良かった。

DSC_0468
その他にさまざまな検証を行なった結果としては、「ろう者」は単に視力(「1.2」や「0.3」というなじみ深いもの)が向上するというわけではなく、脳の機能も含めた「視覚」(動体視力や周辺視野への鋭敏さを含む)が向上するということのようだ。


本書は敬愛するオリヴァー・サックス(平成27年8月30日に他界)による手話に関する本で、ほぼ門外漢なので難解な部分もあったが、全体的に刺激的であった。サックス先生が亡くなったことで、先生のエキサイティングな臨床読本が新たに生み出されることはないのかと思うと、医師としても読書家としても実に寂しいものである。

0 件のコメント:

コメントを投稿