2015年10月19日

精神科カルテについて

精神科では、患者の治療経過はカルテでしか分からない。その他の診療科では、問診、身体所見の他に、CTやMRI、採血データといった客観的なものが残るが、精神科では医師やスタッフが書いたカルテだけが頼りとなる。以下は、医師のカルテに関してのみの話である。

カルテ、特に初診時のまとめでは、原則として「映画で遠くから主人公に近づいていく映像」をイメージして書くようにと指導される。どういうことかというと、まず遠目で分かること、例えば猫背であるとか、服装が派手とか汚れているとか、髪の毛がぼさぼさとか、態度がソワソワしているとか、そういったことから書き始める。そして少しずつ近づいて感じる様子、異臭がする、表情が虚ろ、涙ぐんでいるなどを加えていく。最後に話した内容や、そこから受ける印象などを書く。

このように初診時まとめの「流れ」は「映像」をイメージした型があるのに対し、「内容」は「絵画」のようにかなり人それぞれである。絵画に例えて大きく分けると、ディテイルまで描き込んで写真のような絵にするか、鉛筆でササッと描き上げるラフな似顔絵か、といったところ。指導医Y先生はラフな似顔絵の名人で、カルテはサラッと書いてあるが、読めば患者や診察の雰囲気が伝わる。俺は紙カルテの時には書ける量が時間・体力で制限がありラフスケッチのようなカルテを目指したが、電子カルテになってからはなるべく詳細を書き込むようにしている。

今後、もしかすると一般病院の精神科でも、患者の許可を得て音声や画像、さらには映像を駆使するようになるかもしれない(昔の大学病院では研究用に録画されることもあったようだが今はどうか不明)。データをどう管理するかが問題になるし、初診時にいきなり録音・録画や写真撮影があると、患者や家族も戸惑うだろうから、実現しない可能性のほうが高い。ただ、初診以外、例えば病棟などで写真を残しておくことは、医療記録としても病棟全体で共有する思い出としても歴史資料としても、きっと良いものだと思う。

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