2015年11月27日

同僚先生が入院患者の家族から金をもらってしまった……

同僚先生が入院患者の家族から金をもらってしまった……。断りきれなかった金をどうしたら良いか困り、机の引き出しに入れている、ということを外来クラークに漏らしたそうだ。

入院患者の家族から金をもらうのは、規則違反という以前に、治療に影響を及ぼすという意味で禁忌、悪手である。医師の考えや治療方針が、いくらかの金をもらったところで影響を受けることはない。少なくとも自分はそうだ。ただ、金を渡して受け取ってもらえた家族がどう考えるかはまったく別問題である。金を受け取ることで、「もっと長く入院させてもらえる」など家族に要らぬ期待を持たせることもありうる。

「金は受け取ったが、どうして良いか分からずに机の引き出しに入れており、決して私腹を肥やしたわけではない」というのは、あくまでも受け取った側の言い分であり、差し出した側には、そんなことは一切分からないし通じないのだ。

今日にでも、「まずは絶対に受け取らないよう、そして引き出しの金はすぐにでも返すよう」指導しなければいけないのだが、臨床経験が俺と1年しか違わないのに、そんなことまで教えなければいけないのかと思うと暗澹たる気持ちになる。

実は、俺も金を受け取ったことがある。

幻覚妄想で大暴れして精神科に入院した高齢男性が退院し、その後に身体状態が悪くなって内科に入院して末期となり、奥さんが挨拶に来てお礼を渡してくださった。固辞したが、白衣のポケットにねじ込んで走り去られてしまった。

その後まもなく男性は亡くなった。もらった金は、
「精神科に入院していたAさんの奥さんからいただきました」
と報告した後、病棟の飲み会の幹事に渡して軍資金となった。

この場合、男性は精神科に入院しているわけではなく、また身体的に末期であり、もう二度と精神科病棟への入院はないだろうと思ったことと、ダッシュで立ち去る奥さんを追いかけてまで感謝の気持ちのあらわれである金を突き返すことに抵抗があったのとで、ありがたく受け取ることにした。

これに対して、外来患者からのお菓子やジュースの差し入れ(毎回のようにポケットティッシュを一つくれる人もいる)は、一切の拒否なく受け取ることにしている。それは、そのほうが互いに気持ちが良いと思うからだ。ただし、入院患者の家族からの差し入れは、どんなものであれ一切お断りしている。

なぜ入院患者の家族からの金員や差し入れを受け取らないのか、なぜ外来患者からの差し入れは受けとるのか。そういうことを日ごろから自分なりに突き詰めて考えるということをしておかないから、「断れずに受け取ったが、財布には入れられないから引き出しに」という事態になってしまうのだろう。

診断基準や治療マニュアルにはめっぽう詳しい同僚先生だが、そうした基準やマニュアルと同じくらい、臨床における種々のことに対する自分なりの基準やマニュアルを持つ、そのために日々考えるということの大切さを伝えなければいけない。

でもこれも、敢えて指導すべきものかと考えると暗澹とした気持ちに……。

2 件のコメント:

  1. 難しい問題ですし、かなり前のテレビ番組でこれを取り上げて、いろいろな医師会に取材に行ったら、一切ノーコメントだったことがあります。
    ただ、法律上は、公立病院の医師なり看護師に現金を渡す&受け取るのは、贈収賄で、双方犯罪です。
    それでも、公立病院で横行してた時代がありました。
    ちなみに、外科手術の時でしたが、私の先輩は、身内の手術の際、公立病院で「医師生命を断たれるかと思いましたよ。」の一言に反応して、そこは「あうんの呼吸」で現金授受。
    まあ、完全時効の頃の話ですから、書きましたが。

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    1. >瞬生田さん
      実際のところ、現在でも公的病院でももらっている医師はけっこういます。それは、その立場が「公務員」でないことが多いからかなぁと思います。医師の雇用形態は、特に医局から派遣されている医師の場合、勤務していても自分の立場はなんなのか分からないようなところがあります。
      俺や同僚先生は、準公務員として働いているので、立場は明確なのですがね^_^;

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