2015年11月4日

精神科診察室における挨拶を診療ツール化する

診察室に招き入れた患者が「おはようございます」と言えば、こちらも「おはようございます」と返す。「こんにちは」なら「こんにちは」。人は意識せずとも自然にそういう同調・同期行動をとる。これはミラーリングという行動の一つで、同調された相手はささやかながらも安心感を抱く。

診察室では、このミラーリングを意識的に行なう。たとえ12時近くになっていても、「おはよう」には「おはよう」と答えておいて、「ちょっと遅いおはようですね」などジョークを織り込む。患者によっては、こちらが「おはようございます」と声をかけているのに「こんにちは」と返ってくることがある。こういう時には「ミラーリング不全」ということを少しだけ念頭におく。実際、例えば慢性期の統合失調症患者において、こういうケースが多いように思う。

ミラーリングを意識した挨拶をすることが、どれくらい診療のプラスになっているかは分からないが、精神科医の意識としては、診療は挨拶の時点から始まっている(※)。

こんなふうにして、「精神科医の診察室でのあれこれ」のツール化を目指している。ツール化とは、「大切なことだから気を配りましょう」といった抽象的なアドバイスではなく、もっと具体的なものだ。「金槌の頭には平らな面と凸面がある」と教えるくらいにシンプルで良い。そして、こういう俗っぽくて精神科医ライフハックのようなことに関して書かれた本は、実はあまりない。


※高名な先生方は著書の中で「患者を呼び入れる時点から観察を始める」と書いてらっしゃることが多いが、当院では電子カルテ端末でクリックすると待合室のモニターがチャイムを鳴らして患者の受付け番号を表示し、それを見た患者が自ら入室するというシステムになっている。病院では名前を呼ばれたくない人がいる一方で、番号で管理されるのを嫌う人もいる。難しい問題ではあるが、個別対応はできないのでこの方式に一元化することとなった。

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2 件のコメント:

  1. いちはさま

    確かに…そうです。先生と「こんちは」と挨拶を交わすだけで、受け入れてもらえているんだという安心感を感じます。
    ミラーリングという行動のひとつなのですね、納得です。

    ところで…
    いつ頃から診察室(または病院内)で医師と患者が「こんにちは」と挨拶を交わすようになったのでしょうか?
    わたしが子どもの頃は、こんなふうなやり取りは聞いたことなかったような気がするのです…
    (子どもだから気付かなかっただけかな?)

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    1. >果穂さん
      どうでしょうねぇ……、古き良き、あるいは悪しき時代であったとしても、さすがに挨拶はかわされていたと思うのですが……。他科での診療風景はあまり見ないので分かりませんが、どうしているのでしょうね……。挨拶しなさそうな医師が身の回りに何人かいますが^_^;

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