2015年11月13日

リスカやODを繰り返す人の初診における自分なりの工夫

リストカットや過量服薬(以下、リスカとOD)を繰り返していた若い患者たちが精神的に成長して、いつの間にか問題行動が目立たなくなるということはけっこうある。こちらが積極的に精神療法めいたことをやったということはない。ただただ根気強く、歳をとるのを待っていただけだ。

「歳をとればしなくなる。心身の成長を待ちましょう」
これはリスカやODをする本人だけでなく、心配してついてくる家族にも必ず伝える。「精神科で治してもらおう」と考えてやって来た人たちにとっては拍子抜けというか、あてが外れた感じかもしれない。とはいえ、何もしないわけではない。自分なりの診療の工夫を書いてみる。

リスカやODを主訴にした初診の場合、
「イライラして人を殴る奴よりはマシ」
といったことを、その時その場の雰囲気に合わせて、ただしハッキリと伝える。一緒に来た家族は「そりゃそうなんですけどね……」と弱りきった顔をするが、患者本人は少しホッとしたような表情になる。そのタイミングをつかまえて、
「でもまぁ、しないにこしたことはないね」
と、これはボソリと声かけする。本人もそんなことは重々分かっているので、あまり声を張らずにボソリと言うくらいでちょうど良い。この小さな声かけは家族もきちんと聞いているので、リスカやODをやめさせたくて本人を連れてきた家族の顔も立つ。両者のメンツを潰さない、というのは間に入る者として大切な心構えである。


本書にも、『「歳をとるのを待つ」という治療』というのが出てくる。俺の初診では、この治療(?)について説明すると同時に、前回書いた「その場しのぎ」にも似たようなことをやっているわけである。要するに、家族には「待ちましょう」と伝え、本人には「しないにこしたことはない」と意識してもらう。こうやってその場しのぎをしていくうちに時が経ち、いつの間にか問題は他のところに移っている。こういうことが、時々、ある。そう、あくまでも「時々」。残念ながら、すべてのケースで上手くいっているわけではない。

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