2016年1月15日

精神科医の幸せと自尊心

ある日、自宅に呼んだタクシーに乗ると、
「いつもお世話になっております。Aの兄です」
と声をかけられた。Aさんとは統合失調症の中年女性である。
「こんなに長く安定していて、ありがたいです」
確かに、Aさんはこれまでも入退院を繰り返していたが、俺が引き継いだ後の入院と退院からはすでに2年近くが経っている。

俺が(そしてきっと多くの精神科医でも)嬉しいのは、こういう風に「これまで安定していなかった人が、自分が主治医になって安定している」という時である。ただし、この安定がすべて自分のおかげだなんて思うのは傲慢であるし、おそらく間違っている。

精神科医としては、いろいろな要因が重なった結果として「その人が安定している期間」に主治医として立ち会える幸せを感じるくらいが良い。そして、そこに少しだけ自尊心の種を求めるならば、「いろいろな要因の中の一つとして確かに自分がいる」というところだろうか。

Aさんの場合、彼女の生活と精神症状の安定には、当院のデイケアがかなり重要な役割を果たしている。こういうことを面と向かってスタッフに言うのは照れ臭いので、こうして文章にすることでまわりまわって届くことを期待したい。

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