2016年5月12日

ジグソーパズルと小さな一歩

ある日の夜。

長女サクラは幼児向けの簡単なジグソーパズルを完成させたものの、それを移動させる時にバランスを崩してピースが散らばってしまった。
「ありゃりゃ。もう寝る時間だから、続きは明日しようね」
「うん」

翌日の朝。

俺には俺なりにやりたいことがあるのに、朝ご飯を食べたサクラはパズルをしたいと言う。
「パパにはやることがあるから、一人でやりながら待っていて」
そう言っても、「パパと一緒に」とグズってきかない。仕方がないので隣に座る。

どうせ一緒にやるのなら、パズルのコツを教えたい。早く上手になって欲しい。

「ほら、まず、まっすぐのもの(ピース)を探してごらん」

そう声をかけても、まったく耳に入っていない様子のサクラは、返事もせずに自分のペースで四苦八苦している。その姿を見ていると、ヤキモキしてしまう。

「ほら、よく見て。まっすぐのがあるでしょ、それを最初に合わせるんだよ」

返事なし。

なんだよ、サクラが一緒じゃないとイヤだと言うから隣にいるのに、これじゃ一人でやっているのと同じじゃないか。俺は自分のやりたいことがあって、それを中断しているというのに。

「パパは洗いものをするから、サクラは続けてて」

そう声をかけて立ち上がると、顔をあげて、

「イヤだ!」

ハァ……。抑えても漏れてしまう小さなため息。改めて隣に座る。

「じゃあ一緒にやるから、ちゃんと見て、ほら、まっすぐのがあるじゃん、それを……」

そう教える俺を無視して、サクラはマイペース。そんなサクラにイライラがつのる。

「ほら見て! これ! まっすぐ! 分かる!?」

ちょっと語気が荒くなってしまった。ほんの一瞬だけ固まったサクラは、それからシクシクと泣き出してしまった。

あぁ……、こんなはずじゃなかったのに……。

こうなったらサクラのペースに任せようと腹をくくり、完成するまで黙って見守ることにした。幸い、サクラはすぐに機嫌と集中力を取り戻した。

ようやく、パズル完成。

「できたねぇ」

そう声をかけ、片付けを手伝い、俺は朝のシャワーのため浴室へ。

サクラの不器用さがもどかしくて、ついつい声が刺々しくなったり、話を聞かないのは頭が悪いからなのかもしれないと不安になったり……。でも、サクラにはサクラのペースがある。それに、まだ4歳2ヶ月。できないことがあって当たり前だし、説明しても分からないことだってたくさんあるはず。もっとちゃんとサクラ自身を見てあげないといけない。それなのに……。

あーあ、なんだかダメなパパだったなぁ……と反省。

シャワーを終えて、脱衣所から大きな声でサクラを呼んだ。

「なにー!?」

タタタタッと走ってくるサクラを抱きしめると、

「なに……?」

また怒られると思ったのか、戸惑ったようなサクラの声。

「パパね、サクラにゴメンねって言いたくて。さっき、怒ってゴメンね」

「……、サクラね……、パパと一緒にパズルしたかっただけなの」

そうだよなぁ。サクラはコツを教わりたいとか、上手になりたいとか、そんなことを考えていたわけじゃないんだよね。ただただ、パパと一緒にパズルしたい、それだけだったんだよな。それなのに、俺ときたら……。もう一回、きちんと謝る。

「うん……。ゴメンね……、またパズルしよう!」

「うんっ!」

ほんの少しだけ涙目のサクラがニッコリと笑った。


今後も、こういう失敗を、きっと何回も何回も繰り返すのだろう。サクラは一番上の子だから、失敗に付き合わされる回数が特に多くなると思う。そう考えると、申し訳ない気持ちにもなってしまう。

一歩踏み出せば、一歩ぶんだけ景色が変わる。

サクラの一歩は、大人にとっては小さいけれど、本人にとっては大切な一歩。その一歩を、余裕を持って見守ってあげられる親になれるよう、今回のパズルのことを胸に刻もう。




今回のパズルはこれ。

ちなみにユウのパズルはこれ。

2 件のコメント:

  1. パパと一緒に試行錯誤したかったサクラちゃん。パズルで遊ぶ以外のことをしたかったパパ。両者の些細なズレが波乱を生むも、最後は丸く収まり笑って読めました。一歩踏み出せばその分だけ世界が広がる好例ですね(^^)一緒に成長して行く父娘(おやこ)の姿が素敵です。

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    1. >Hide and Seekさん
      妻はこれを読んで泣いちゃったそうです。泣いてもらえて良かったと思いました。
      俺もずいぶん反省しました。
      父娘ともども、これからもっと成長していきます!

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