2016年5月20日

武井壮に学ぶ、『精神科医として診療のトレーニングをどうやるか』

武井壮によると、人間は体を自分の思い描いた通りには動かせていないそうだ。彼は、少年の時に自分の動きをビデオで見てそのことに気づいた。そして、自分のイメージと体の動きが一致しているかどうかを繰り返し確認・フィードバックするという地味なトレーニングで、スポーツそのものの成績を向上させた。

「思い描いた通りにはできていない」
これと同じことが、言葉や態度にも言えるだろう。頭の中では良い考えだと思ったのに、いざ文章化すると陳腐になってしまうことはよく経験する。また自分としては共感的な態度を示したつもりなのに、「感じ悪い」と受け取られることもある。発する言葉、その語調、雰囲気なども同じである。自分のイメージ通りに体現できているとは限らないのだ。

精神科医としての仕事が、スポーツのようにビデオや写真でフィードバックできれば良いトレーニングになるのだろうが、患者やスタッフとのやり取りをビデオやレコーダーに残すというのは簡単ではない。

では、精神科医にとっての「素振りとフィードバック」(以下、「素振り」と表記)はどうすれば良いのか。

患者を相手にした診療のための「素振り」は、スタッフとのやり取りの中に見出だせそうである。診療のための「素振り」を家庭生活や友人関係にまで広げると精神的にきついので、職場の中だけに留めておく。ではスタッフコミュニケーションのための「素振り」はどうするかというと、こちらは家族や友人といった日常生活の中で行なっていく。

この「素振り」の考えからいけば、スタッフのウケが悪い医師はおそらく患者に対しても自分の思ったような診療はできていない。同じように、親族や友人との付き合いが下手か苦手な医師は、スタッフコミュニケーションも自分が思い描いた通りにはできていないはずだ。精神科医にとって、自分のやっていることをフィードバックしてくれるスタッフや家族・友人がいないということは、自分のセルフイメージと実際の診療やスタッフコミュニケーションとのギャップに気づくことができないということである。

家族や友人との付き合いはスタッフコミュニケーションに、スタッフとのやり取りは患者に対する診療に、それぞれ「素振りとフィードバック」としてつながっていると考えれば、日々の生活や業務の中で自分のスキルアップにつながることがたくさん見つかるはずだ。

研修医時代に精神科で指導してくださったK先生が、
「精神科医は、日常生活で出会う人を相手にトレーニングしなきゃいかん」
というようなことを仰っていた。これを恩師Y先生に話したところ、
「そんなこと、とてもキツくてやってられないよ。仕事とプライベートは分けないと」
ということであった。今回の俺の提案する方法は、K先生とY先生の中間の、良いとこどりな考え方だと思う。


7分55秒あたりから、今回の話がでてきます。

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