2016年5月6日

コレステロールに悪玉と善玉があるように、ストレスにも悪玉と善玉がある……のか!?‏

コレステロールに悪玉と善玉があるように、ストレスにも悪玉と善玉がある。

こんなことを思いついたが、いやちょっと待てよ。

そういえば最近、コレステロールの数値を下げることだけにとらわれた薬物治療はあまり疾患予防に寄与せず、運動や食事といった生活習慣全体を含めた改善こそが大切という話が出たばかりではなかったか。糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病(※1)では、具体的に数値が見えるせいで、患者だけでなく医師までもが「数値を治す」という罠に陥りがちである。そうなると、薬を飲んで数値が改善し、暴飲暴食して数値が上がり、薬を追加してまた数値を下げ、不摂生しては薬を増やすという無限ループに陥ることになる。

似たようなことが、精神科における「ストレス」の扱いにも言えるかもしれない。ストレスの原因を取り除けば、確かにしばらくは楽になるだろうが、世の中で生活する以上、いずれ他のストレスにぶつかるのは避けられない。コレステロールと同じで、ストレスだけが悪者と決めつけ、それを取り除けば良いと考えて対応してしまうと、その患者はストレスに出くわすたびに精神科を受診しなければいけなくなる。これでは、身体における「数値治療」と同じだ。

精神科医としては、ストレスを抱えて精神科に来る人には、少しだけ違う視点や物ごとの捉え方を見つけたり、自分自身の思考のクセに気づいたりして欲しい。そうすることで、今回のストレスを乗り切った後にやってくる別のストレスへの備えとしてもらうのだ。そのためには、なにも精神分析とか認知行動療法とか、そういう難しい話を考える必要はない。要は心構えの問題で、「数値だけに注目するような治療はしない」と意識していれば、それだけで診察室では患者に対して何らかの影響力を持てるはずだ。そして、こういう場合の影響力(薬になぞらえて力価と言っても良いかもしれない)は、患者がかすかに感じられるくらい小さいほうが良い。というのも、多くの場合、効き過ぎる薬には副作用がつきものだから。

ただし、念のため、緊急介入を要するストレスがあることも付言しておきたい。コレステロールの例えで言うなら、中性脂肪の数値がある一定以上になると命に関わる急性膵炎を起こす危険性があるから、何はともあれ薬で数値を下げる、という治療と同じだろう。

最後に、冒頭に述べたストレスに善玉と悪玉があるかについて。こういう二元論的な分類をしてしまうと、すぐに、「善玉ストレスを増やしましょう」「悪玉ストレスを避けましょう」と単純化され、数値治療と似たようなものになってしまうだろう。そのストレスが善玉か悪玉かを見極めることは、きっとそう重要でないはずだ。


※1 1型糖尿病や家族性高脂血症などは別の話。
※2 煩雑になるので、ストレス、ストレッサーは区別せず、一般的に用いられる「ストレス」とのみ記述した。

0 件のコメント:

コメントを投稿