2016年10月7日

検査結果を「読む」ことの大切さ

ルーキー先生の診療チェックのため、それから自分の勉強のため、月に数回の新患カンファを行なっている。そこでは、ルーキー先生が、自分がみた新患についてプレゼンする。指導する立場として、行き当たりばったりでは良くないので、新患カルテは事前に全員分チェックしている。

ある日の新患カンファで、40代女性のケースがあった。診療内容は問題なかったが、採血検査でγ-GTPだけが90台と高いのが気になった。この点についてルーキー先生に尋ねると、
「毎年の健診で指摘されるそうです」
という答えだった。実は、事前にチェックして知っていたのだが、γ-GTPは毎年高いわけではなかった。2年前の健診では正常であったものが、昨年と今年の健診で100前後と急に上昇していたのだ。患者本人にとって、それは「毎年指摘される」という記憶になったのかもしれないが、事実とは異なる。

ここでの教訓は2つ。

1. 患者の申告を鵜呑みにしない。
2. 検査値は必ず過去のデータと比較する。

以上、新患カンファで話した内容である。

さらにここでは、数値を比較することの重要性を少し書いてみたい。理科で習って覚えている人も多いであろう「ヘモグロビン」を題材とする。単位はg/dLで、だいたい13から16くらいが正常だ。これより低いと貧血ということになる。

さて、ある人の採血検査でヘモグロビンが11だったとする。数字だけ見れば軽度の貧血ということになるが、過去のデータと比較した場合どうか。もし、先週の採血で16だったとすると、1週間で5も減少していることになる。これは消化管出血でも起きているのではないか、と心配になる。

では、1年前のある日の採血を確認して11だったらどうだろう。慢性的に軽度貧血の人はけっこういるので油断しがちだが、その前後の数字もきちんと確認しないといけない。というのも、「1年前のある日」が11であったとしても、実はその1週間前には16で、それが1週間で11に減少しているのかもしれないからだ。そこで、検査データだけでなくカルテも確認すれば、1年前にも消化管出血で治療を受けていた、なんてこともある。「1年前のある日」と今回が同じ数字だからといって「変化なし」と安心してはいけないということだ。

電子カルテでは、検査値を時系列で並べて確認できる。それぞれの項目を一つずつ確認するのも大切だし、数値によっては組み合わせることで意味をもつものもあるので、そういう視点も必要だ。あらゆる検査結果が、「見る」ものではなく「読む」ものである。そして、熟練の身体科医師は、これらをパターン認識で読み取っているのだろうと思う。精神科医もそういう目を養うべく、検査値の時系列結果は常々チェックしなくてはいけない。

以下、蛇足。

その日の検査を縦軸、時系列を横軸とする。この両方がそろっていると、医師は検査結果をより正しく読める。一方で、以前の情報がまったくない飛び込みの新患だと、縦軸しかなくて横軸がないので検査結果を読みとりにくい。健診の大切さの一つは、この横軸を作ることである。



血液検査を「読む」にあたって勉強になる本。


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