2016年12月7日

身近にあった医療事故 『組織行動の「まずい!!」学 どうして失敗が繰り返されるのか 』

パーキンソン病を患う60代女性が、自宅で転倒して大腿骨を骨折したので、整形外科に入院して手術を受けた。それから2-3ヶ月の入院予定であったが、手術1ヶ月後から幻覚や妄想がひどくなり、その影響で夜中に動きまわって転倒してしまった。これでは安全に看護できないということで、精神科病棟に移ることになった。ここで、この日をX日とする。

Xの翌日、術後ルーチンで予定されていた大腿骨のレントゲンを撮ったところ、前回手術したのと同じところの骨折が見つかった。しかし、実はXの3日前にも同部位のレントゲンを撮っており、しかも明らかな骨折が写っていたことが判明した。

患者側からすれば、精神科病棟に移される3日も前にレントゲン検査して骨折が分かっていたはずなのに、それが放置されたままだったということになる。どうしてこういうことになったのか。

友人の整形外科医長、放射線科技師長と話し合って分かったのは、以下のことだった。
  1. Xの3日前、患者から「足が痛い」という訴えがあったので、整形外科の主治医がレントゲンをオーダーした。しかし、その日、主治医は予定があってバタバタしており、検査結果を確認することを忘れて病院を出てしまった。
  2.  整形外科では医師同士でダブルチェックを行なうようにしているが、Xの3日前のレントゲンは撮ったことを知らなかった。
  3. レントゲン撮影時にいた放射線技師は、全員がその骨折に気づいていたが、あまりに明らかな結果だったので、敢えて主治医に連絡しようとまで思う人はいなかった。
1と2を改善するための方法として、「検査をオーダーして結果が出たら、オーダーした医師の電子カルテ画面にアラートが出る機能」と「主治医と同時に、医長にも検査結果アラートを出す」というものがある。実は、1年半前の電子カルテ導入の際、業者に対してアラート機能がつけられないかと要望を出したのだが、そういう機能はないとのことだった。だから、この改善案は実行できない。

そこで、整形外科医長と技師長との間で、
  • 技師が見つけた異常像については、全例を指示医に連絡する。
  • 医師は連絡されることを厄介がらない。
  • 技師は連絡することを臆さない。
という取り決めとなった。ハード面での改善策が実現不可能なので、医師だけでなく各職種をまじえてのダブルチェック、トリプルチェックを導入するしかない。結局は人頼みなので、エラーを防ぐ機能は強くはないだろうが、少なくとも今までよりはマシはなずだ。

さて、その後であるが、この女性がどう処置・対応されるのか気になっていたので、時どきカルテをチェックしていた。すると、看護記録に、
「もともと統合失調症があり、幻覚妄想あるとの引き継ぎ」
という記載を見つけた。この女性はパーキンソン病である。決して統合失調症ではない。早くも、将来の医療事故の芽が見え隠れしている。これを放置すると危ない。今後、この女性に起こるあらゆる事象について、「統合失調症だから」で済まされる恐れがあるからだ(残念ながら、現実にそういうケースは多い)。

このように、ミスや事故の種はあちらこちらに散らばっていて、芽が出るまで気づかれないことが多い。芽に気づいたら放置せず、なるべく早くに摘みとる習慣をつけておくことも、事故予防のために大切である。今回の誤った引き継ぎに関しては、精神科主治医のルーキー先生に指摘しているが、ルーキー先生が動かないようなら指導が必要である。


今回読んだ本は、主に日本での失敗事例とその原因、改善のための考え方などが紹介してある。文章量はそう多くないので、ミスを防ぐことに興味はあるが分厚い本を読む気力も時間もないという人が「手始め」に読むのに勧めやすい。

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