2017年12月21日

古くならない精神科治療論 『精神医学の思想 医療の方法を求めて』

統合失調症の症状が悪化する最大の原因は薬を飲まないことだが、それ以外に三つの要素があるという。色、金、名誉だ。この「色」とは、異性関係、恋愛問題のことである。そして、この「悪化要素」は人によって一定しているのだとか。これは、臺弘(ウテナ ヒロシ)という精神科医の説だとなにかで読んだ。確かに、入退院を繰り返す人や、入院中に調子を崩す人を見ていると、この説はわりと当てはまっていると感じる。


臺先生の本から一部引用する。まずは精神科医の私生活について。
私の妻は私に対して「あなたのようにひとの心の分からない人によく精神科の医者がつとまりますね」といって笑う。私は「患者さんは君よりも正直だからさ」と応酬する。
これはあるある(笑)

続いて、患者にとっての家族の話題から。
家族は病気をつくるのに一役演じたとしても、病気を癒すためにも大きく働いてくれた。医者が家族の病理性だけを指摘するのは間違いで、家族こそ治療のための最も強力な協力者になりうる。
最後に、生活療法の話題より。
患者をフォークダンスの環の中に加えようとして、外から入れ入れといくら励ましても無駄な場合にも、皆が手をつないだ環の一つを開けておいて、さあいらっしゃいと内から呼び込むと、わりに抵抗なく環に加わることができるものである。
これは集団の場の力が人に与える力の最も簡単な例であろう。
1972年発刊の本だが、現在にも通じる治療論だ。精神科医が一読する価値は大いにある。

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