2018年3月19日

ある中国残留孤児の生涯を描く落涙必至のノンフィクション 『あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅』


中国残留孤児について興味をもったきっかけは何だったろうか。もう思い出せないが、なにかの本で当時の孤児たちの話を読み、涙したり、憤ったりした記憶がある。そのときに、ふと「そういえば、祖父も満州に行っていたのだ」と気づいた。

2012年1月に87歳で他界した祖父は、終戦の1945年には20歳前後だったことになる。何歳のときに渡海したのか分からないが、兵士としてではなく、満蒙開拓団の開拓移民としてだったと聞いたことがある。

さて、終戦前のソ連侵攻により、移民らが凄惨な逃避行を強いられたことは、帚木蓬生の小説『逃亡』『蛍の航跡』『蠅の帝国』などにも描かれていた。もしかすると、20歳の祖父も命からがら逃げ帰ってきたのだろうか。だとするなら、その体験談を聞かないまま見送ってしまったことが非常に悔やまれる。祖父は戦争体験をほとんど語らない人だったので、仮に尋ねたとしても多くは教えてくれなかったかもしれないが……。

さて本書は、著者が中国残留孤児であった父・城戸幹の生涯を調べて描く「身内の伝記」である。身内の話であるから感傷的になりそうなものだが、実際にはかなり距離をおいて淡々と綴られた文章だった。それでいて、涙なしでは読めないところが多々ある素晴らしい内容。特に中盤まではグイグイと引き込まれた。

後半は著者が体験した「中国」や、残留孤児支援などについてである。本書前半の主役であった城戸幹は、その執念で無事に日本へ帰国してから結婚し、子どもをもうけた。そのうちの一人が著者である。つまり、著者は日本で生まれた「中国残留孤児二世」ということになる。中国残留孤児の多くは中国で結婚して子どもを生んでおり、日本生まれで日本語を話す二世はかなり少ないらしい。このコウモリのような立場が著者を悩ませることもあったようだ。そういう苦しみも糧となり、ノンフィクション大賞を受賞するようなものを書きあげることになったのではなかろうか。

最終盤は中国共産党にまつわる歴史的な記述が多く、そのあたりは少々読み疲れしてしまったが、全体を通じては良いノンフィクションであった。

余談ではあるが、最後に我が祖父について。満州にいたころ、同郷の男性との間で「妹を嫁にもらう」と約束し、帰国後は約束を守って祖母と結婚したそうだ。「努力と正直」をモットーとした祖父らしい義理堅さである。

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