2018年8月30日

ちょっと言葉が軽すぎやしないか……? 『葬送の仕事師たち』


葬儀業に携わる人たちへの取材をまとめたノンフィクション。取材対象者たちの想いや言葉は重く、ときに涙ぐまされるほどのものなのに、著者の言葉が軽く、それはときに不快感すら抱くほどである。

特に生理的に受けつけなかったのは、赤ちゃんが火葬されるのを取材した場面。火葬前、著者はモニターを通じて、棺にへばりつき泣き崩れる母親の姿を見ている。そして、赤ちゃんが火葬される。
炎に包まれている。不謹慎かもしれないが、私には「モノ」のように見え、反り返るので、ともすれば「スルメ」のようにも見えた。
不謹慎かもしれない、ではなく、明らかに不謹慎だろう。人が火葬される様子を見て頭に浮かぶ感想は人それぞれだし、それはどうしようもない。しかし、頭で思い浮かべるだけと、こうして言葉にすることとの間には、大きな隔たりがあるはずだ。その隔たりを、狙ってなのか、あるいは無自覚なのか、こうして踏み越えてしまっている。そういう文章は他にも散見された。取材対象者たちの言葉が胸に響くだけに、著者に対しては「どうしてこうも無駄口を叩くのだ……」と言いたくなる。

ストライクギリギリを狙ったデッドボールという一冊で、評価がもっと賛否両論に分かれるべき本だという気がする。だから、敢えて星1つにする。

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