2016年6月27日

ファストフード業界について広く、深く、鋭く、あらゆることを論じ尽くす大力作 『ファストフードが世界を食いつくす』


食の安全問題について論じる本かと思っていたが、中身はもっと広く深く、そして鋭く、非常に面白かった。

巨大企業マクドナルドを中心とした各ファストフード会社の歴史に始まり、各企業が経済に与えている功罪(特に罪のほう)を指摘し、店舗従業員の低賃金問題、牛肉解体工場の危険すぎる労働環境、下請け企業のようになってしまった畜産業者・農家の過酷な現状、肥満の増加問題、子ども向けの広告による「子どもからの搾取」など、ファストフードにまつわるあらゆる問題を論じ尽くそうとしているような大力作。

特に「子どもからの搾取」については印象深かった。例えば、欧州の福祉を重視する一部の国では、子ども向けの食品CMは禁止されているそうだ。それは、子どもたちがCMに影響を受けて、不健康なものを食べたがるようになるのを防ぐためだ。ところが、大企業が政府に対して強い影響力を持つ先進国では、こんな政策は実現できない。

それどころか、今や企業の合言葉は「子どもを狙え!」らしい。子どもの時に食べ慣れた味は、大人になっても好むからだ。言われてみると、確かに日本でもマクドナルドはハッピーセットのCMが目立ち、大人向けのCMは少ないような気がする。ハッピーセットで値の張るオモチャを用意して元がとれなくても、味に慣れた子どもたち(企業は「子どもに忠誠心を持たせる」と表現するようだ)が成長すれば足しげく通ってくれるだろう。そんな未来を見据えなくても、現時点でハッピーセットに釣られた子どもが親や祖父母を連れてくる。

子を持つ親として、こうしたことはおぼろげには分かっていたが、企業が子どもを狙う方法を具体的に知ると、いくらか対策のようなものを練ることができる。そういう意味では、子育て世代にもぜひとも読んで欲しい内容だ。

翻訳も良い。現時点で文庫版のAmazonレビューはないが、単行本のほうのレビューではかなり評判が高い。邦訳タイトルがチープなので読むのを敬遠していたが、読んでみて大正解だった。

ファストフードの愛好家にも嫌悪者にもお勧め!

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返事が遅くてすいません。