2016年9月15日

爆笑の連続! 『弱くても勝てます 開成高校野球部のセオリー』


開成高校は超進学校で、なんと毎年200人近くが東大に進学するという。そんな開成高校の硬式野球部が、平成17年の東東京予選でベスト16まで勝ち進んだ、という話を聞いた著者の好奇心が高まり、取材することになったようだ。

読んでみると、爆笑と感心の連続で、とてもではないが電車の中などで読めるような本ではなかった。例えばこんな感じ。
--野球って危ないですね?
外野を守る3年生にさりげなく声をかけると、彼がうなずいた。
「危ないですよ」
--やっぱりそう?
「特に内野。内野は打者に近い。近いとこわいです。外野なら遠くて安心なんです」
だから彼は外野を守っているのだという。なんでも彼は球だけでなく硬い地面もこわいらしく、そのためにヘッドスライディングができないらしい。打者も地面もこわいので隅のほうの外野にたたずんでいたのである。
また、あるピッチャーへのインタビュー。
--ピッチャーに向いていたんですね。
「向いてはいないと思います。僕には向いているポジションがないんです。向き不向きで考えたら、僕には居場所がありません」
監督がポジションを決める基準はシンプルだ。
・ピッチャー 投げ方が安定している。
・内野手 そこそこ投げ方が安定している。
・外野手 それ以外。

「これだけですか?」と私が驚くと「それだけです」と青木監督。
ある練習試合で、塁に出たランナーが牽制球でアウトになりまくる。どうやらピッチャーがモーションに入るとすぐに2塁に向かって走り始めるので、すぐに牽制で刺されてしまうのだ。
「ゆっくりスタートすればいいんだ!」と青木監督が叫んでも、彼らは動きがゆっくりするだけで、スタートを切るタイミングは早いのでアウトになった。「バカ」「バカ集団」「これをバカと言わずして何と言う、バカ」と青木監督。
こうして試合が進み、ついには、
監督も誰を叱ればよいのかわからなくなっている様子で、「そう、こうやって振るんだ! イチかバチか!」と相手校の選手のスイングをほめたり、「俺だけが気合いが入っているのか!」「さあやるぞ! 俺がなんでやるぞ! って言うんだ。そのこと自体がおかしい!」と自らを責めていた。そしてピッチャーがキャッチャーからの返球をジャンプして捕ろうとし、ジャンプから着地したところで捕球したりすると、「人間としての本能がぶっ壊れている!」「普通の人間生活を送れ!」と叫んだ。
青木監督の指導がいちいち面白い。
「必要なこと、思っていることを声に出す。声をかけられたヤツはそれに反応する。野球の監督がなんでそんなことを教えなきゃいけないんだ!」
ちなみに、この青木監督自身は、開成高校出身ではないものの東京大学卒業である。

もともとは「弱くても勝てます」というタイトルが、精神科医療の「下手でも治せます」に置き換えられそうで惹かれて買ったのだが、純粋に読書として非常に楽しい時間を過ごせた。とにかく面白くてお勧めの本。

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