悪魔は自分の名前を知られないようにするらしい。名前を知られるとパワーがなくなるからだ。魔術師は、悪魔の名前を知ることで相手を自分の従僕にすることができるのだ。これはなにも西洋の悪魔に限ったことではなく、日本の鬼や妖怪にも名前を知られると消えてしまうものがいる。
人間の心の中でも、同じようなことが言える。漠然とした不快な気持ちに「不安」「悲しみ」と名づけることで人の心が慰められることがある。誰かにさんざん愚痴ったあと、その人から「それは悲しいね」と声をかけられると、「そうかこれは悲しさだったのか」と、それだけでなにか癒されたような心持ちになる。また、心身の不調があってあれこれと思い悩み、病院へ行って病名がつくだけでホッとする、そんなこともある。
得体のしれないものの名前が分かることによって、あるいは名づけることによって、それらを自分に理解できる何かに変換して安心する。ずいぶん昔から行われてきたこの方法が、悪魔の名前とパワーの例えで表されているのかもしれない。
故・安部公房が、「砂漠の思想」という著書の中で、似たようなことを書いてました。
返信削除動物であれ何であれ、名付けることで、人は恐怖感をなくしてきたと。
そう言えば、安部公房も医学部(東大)卒だった。
「医師免許を取らない」約束で卒業させてもらったらしいけど。
>ししとう43さん
返信削除安部公房がそういうことを……。
いつか読むかも、と思いつつスルーしている作家の一人ですねぇ、彼が医学部とは知らなかったですが、そのお話からすると結構奇人だったんですかね(笑)
奇人と言えば奇人でした。
返信削除精神を病んで(たぶんノイローゼ)、友人に病院に行くように奨められてたが、意地で行かなかったら、その友人が精神を本格的に病んでしまったらしい。
>ししとう43さん
返信削除25歳のころ、『箱男』の粗筋について知人に教えてもらって、なんだかいっちゃっている小説家だなぁと思った記憶があります(笑)
友人が病んじゃうというところが、またなんとも……^^;