2012年10月17日

とどめ ~あるイジメの結末~

最後にアイツを蹴ったのはリュウイチだった。リュウイチが頭を蹴った時、パキンとグシャが同時に鳴ったような、そんなイヤな音がした。そのあと、ケンジが倒れているアイツの顔を殴っても、アイツは痛がりもしなかった。目すら閉じなかった。だから、アイツにとどめを刺したのは、リュウイチのはずだ。

今回のお仕置きで、途中から武器を使い始めたのはケンジだった。ケンジは落ちていた鉄の棒で、アイツを叩きまくっていた。最初は腕とか背中、それから太もも、スネ、股間、興奮してきたケンジは首や顔や頭も突いて叩いた。叩くたびに、痛そうな音がしていた。

「ヤバいかも」
一番最初に顔を殴ったヒロシが、アイツが動かなくなって動揺したのか、声を震わせて泣き出した。メソメソしているヒロシの頭をケンジが叩いた。パシンという音は、それまでアイツが受けていた攻撃音と比べるとやけに軽かったけれど、それでもヒロシはますます強く泣いた。

「橋から落ちたことにしようか」
と言い出したのは、一番ひどく殴ったり蹴ったりしていたマサヤだった。マサヤは、皆で口裏を合わせればバレないさ、と言った。
「それイイネェ」
リュウイチとケンジは勢いよく賛成した。ヒロシはただただ泣いていた。口裏合わせを提案したマサヤは得意げだった。

アイツは死んじゃった。
最初に顔を殴ったのはヒロシ。
最後に頭を蹴ったのはリュウイチ。
散々殴って蹴ったのはマサヤ。
鉄の棒なんか使ったのはケンジ。

こいつら、皆、どうかしている。ハッキリ言ってバカなんだ。手加減というものを知らない。いくらアイツがムカつくからって。バレたら、こいつら皆、有罪だろうな。僕は、ほとんど見ていただけ。二回か三回、アイツのスネを蹴っただけ。

マサヤがニキビ面を歪めてニヤつきながら、僕を見た。
「言い出しっぺのお前が、本当は一番悪いんだぜ」
ケンジもリュウイチも僕を見て、そうだそうだと言った。ヒロシでさえ、泣くのをやめて僕を見ていた。その目は、なんだか僕を非難しているようだった。

だから、バカは嫌いなんだ。
お前ら、全員死ねば良い。
お前らも、死んでしまえ。

僕は、高校受験の勉強計画を練りながら、目の前のバカたちを呪い続けた。

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