発売当初からAmazonレビューでは4.5以上と高評価だった本書。執筆者の中には、日ごろからネットで良質な情報発信をしている人たちの名前もあるし、良い本だろうと思っていたら……、ある日を境にガックリと低迷し平成28年10月5日時点で3.8。レビューは賛否両論となっていたので、どんな本なのか興味がわいた。
結論からいくと、星3つ。あら、俺も平均点を下げちゃった……。
一応書いておくと、決して内容が劣悪だったわけではない。むしろ良い内容だった。では、どうして星3つにしたのかを記しておきたい。
子育てに限らず、世の中には大きく分けて科学派と神話派がいる。ここでいう「神話派」とは、ギリシア神話とか古代神話とかの「神話」ではなく、根拠のない口伝や都市伝説のようなものを真に受ける人のことで、言葉の響きでそう呼ぶだけである。また、もちろん、科学派の中にもオカルトを少し信じる人もいるし、神話派にも科学的であることを大切にする人はいる。だから、あくまでも、大きく分けて、ということだ。
本書は、子育てに関して、まだそうした「属性」の定まっていない中立派の新米パパ・ママがターゲットになっている。決して、神話派の人たちを科学的に説得して鞍替えさせようとするものではない(もしそういう意図があるのなら、あまりの弱さに星1つである)。
すでに、ある程度「科学派」である自分にとって、内容に目新しいことはなかった。それどころか、
「神話派の主張のおかしなところを取り上げて、新米パパ・ママの助けになろうとしている本なのに、そんなに曖昧で、むしろ神話派が持ち出すような論理展開で良いのか!?」
とツッコミたくなるような部分もあった。
一例をあげよう。「玄米菜食が一番いいって本当?」というパート。
お米は健康に悪影響を与える「無機ヒ素」の多い食品でもあります。無機ヒ素は、国際がん研究機構の発がん物質についての研究で、明確に発がん性が確認された物質です。無機ヒ素は、特に糠の部分に蓄積されるので、玄米食ばかりだと過剰摂取になる恐れがあります。
間違ったことは書いていないが、別の物質について神話派がこのような話を持ち出すとき、科学派は必ず「量の概念が大切だ」と反論する。「塩も砂糖も、水さえも、とりすぎれば有毒なのだ」と。だったら、玄米食についても、「玄米食ばかりだと過剰摂取になる恐れがあり」なんて曖昧な表現は許されないはずだ。1日何合の玄米食をとることで、無機ヒ素の摂取がこれくらいになり、発がんリスクがこれくらい上がるということを示さないと、とかく不安を煽りたがる神話派の主張と大差ないではないか。
これが星を下げた理由の一つ。
科学的なものを好むか、神話的なものに親しむか。それは知能の問題ではなく、「好み」である。親の好みが子に影響するのは仕方ない部分もあり、悪影響が強すぎると子どもは可哀想だが、多少の「科学からの逸脱」くらい放置でかまわないだろう。本書でも取り上げられている「江戸しぐさ」「水の記憶」などは、バカみたいだと思うが、やり玉にあげるほどのことでもない。
このように、本書は科学派には物足りず、神話派の考えを変えるにはパンチ力に欠ける。全体的に、帯に短し襷に長しなのだ。だから、すでに科学派である人は敢えて買う必要はないし、神話派の人が買っても考えは何も変わらないだろう。それから、正直なところ、テーマによって内容が玉石混淆でもある。同じ著者でも、あるテーマは切り口鋭く、別のテーマではちょっと弱い、ということもある。だから、星3つにした。
だいたい、こんなにシンプルな内容にしてはタイトルが大げさなんだよな……。こういう手法も神話派が好むやり方じゃないか……。
とはいえ、初めての子どもが生まれる、あるいは初孫が生まれる人にはお勧めしたい本ではある。