2018年3月14日

カジノから金を巻きあげるエリート大学生たちの光と影に迫るノンフィクション 『ラス・ヴェガスをぶっ潰せ』


全米屈指のエリート名門大学であるマサチューセッツ工科大学(MIT)。そこに通う学生や、中途退学者たちがチームを組んで、ラス・ヴェガスをはじめとしたカジノを荒らしまくる。その方法は、トランプのブラックジャックだ。

1組のトランプを用いてブラックジャックをするとしよう。配られたカードが「使用済み」として排除されていけば、それらを覚えていくことで、未使用のカードを把握できる。これをカードカウンティングという。これに対抗するため、カジノ側は6組のトランプを用いる。枚数が増えればカウンティングが困難になるだろう、というわけだ。

ところが、頭のいい人はいるものだ。使用済みカードの2から6をロー・カードとしてプラス1点、10から13とAをハイ・カードとしてマイナス1点でカウントしていく。これが10や15などになると「ホット」な状態(つまり10から13やAがたくさん残っている)で、プレイヤーが数パーセント有利になるというのだ。この方法は、暗記や複雑な計算を必要とせず、集中力があれば可能だし、カードが6組になったところで困難さが増すこともない。

まず、チームの一人がテーブルにつき、少額でプレイしながらカウントする。テーブルがホットな状態になったら、フロアにいる他のメンバーにサインを送る。そして、そのメンバーが何食わぬ顔でそのテーブルに参加し、高額プレイで大儲けする。

これらは違法ではないが、チームプレイをやっていることをカジノ側に気づかれると追い出されるので、バレないようサインを前もって決めておく。また、高額プレイするメンバーは「暇を持てあました金持ちのボンボン」「田舎から出てきたエリート」「東洋から来た成金社長」などを演じる。そのために偽名を使うこともあり、変装さえする。

こうして大金を手にしていく彼らだが、ときに危ない目に遭い、実際に肉体的に暴行を加えられたり、脅されたり……。

MITの優秀な学生たちだから、統計を用いたスゴいことをするのかと思いきや、やっていることはこんな単純なことだった。こんなカウンティングだったら、自分でもやれそうな気がする。ちょっと一攫千金でも狙ってみるか。そんな気持ちになる人は多いようだが、たいていカモられて終わる。

「勝てそうだ」と思わせるのも、カジノ側の戦略なんだよね、きっと。

とてもエキサイティングで、読みやすくて、あっという間に読了。

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