2018年4月5日

「なんとなく」の感覚を大切に!! 『第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい』 (後編)

人の顔を思い出すという行為は無意識の認知である。考える必要はなく、顔がすっと浮かぶ。しかし、紙とペンを渡されて、輪郭、髪の色、目鼻立ち、服装、アクセサリーなど、見た目の特徴を詳しく書かされたらどうだろう。警察が容疑者を捕まえて目撃者に確認させることを「面通し」と言うが、こうした説明を求められた後に面通しをすると、今度はその人の顔をちゃんと言い当てられなくなるそうだ。

何もしなければ問題がなかったはずの「顔を見分ける能力」が、顔の特徴を説明することで弱まってしまう。心理学者ジョナサン・W ・スクーラーは、これを「言語による書き換え」と呼ぶ。顔を言葉で説明すると、視覚記憶が言語に置き換わり、「どんなふうに見えたか」ではなく、「どんなふうに見えると言ったか」の記憶を引き出すというのだ。


別の話もある。

1983年、カリフォルニアにあるゲッティ美術館に、紀元前6世紀の大理石像が持ち込まれた。「クーロス」と呼ばれる全裸の若い男性の立像で、美術商の言い値は1000万ドルだった。美術館側はクーロス像を借り入れ、徹底的な調査にかけるなど慎重に対応した。地質学者が高解像度の立体顕微鏡を使って2日がかりで精査し、また電子顕微鏡、質量解析機、X線解析などのハイテク装置を駆使して調べあげた結果、このクーロスは本物であると結論づけられた。

しかし、このクーロスを見たイタリア人の美術史家は一目見て、なぜだか分からないが「爪が変だ」と思った。また、別のギリシア彫刻専門家は見るなり「お気の毒に」と言っていた。さらに、メトロポリタンの元館長は見た瞬間に「新しい」と感じた。アテネ考古学会会長は「初めて見た瞬間、なんだかガラス越しに見てるような感じがした」としらけてしまった。これらの評価を受け、改めて調査された結果、クーロスそのものではなく、彫像にまつわる手紙や書類が偽者であることが発覚し、このクーロスはほぼ間違いなく模造品だと結論づけられた。

専門家が第1感で見抜くのに要した時間、2秒。

この本では、こうした第1感による成功例だけでなく、それが失敗につながった例も挙げてある。そして、なにがその第1感を歪めてしまったのかにも言及してあるところがバランスが取れていて良い。

2 件のコメント:

  1. Ciao いちはさん
    わかるなあー、、
    私もこの最初の二秒に、、ってか瞬間に 感じることを非常に信頼しています
    間違えないんです、不思議と

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    1. >junkoさん
      返事遅くなりすいません。
      逆に言うと、直観、直感、最初の2秒で何かを感じられる人だからこそ、イタリアでの生活というのがあったのかもしれませんね。直感が先か、一流が先か、という問題はありそうです。

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