2019年4月8日

玉石混交の当事者エッセイだが、治療者は一読して損はなし! 『上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白』


小田嶋さんはTwitterで頓珍漢なツイートをすることも多い(@tako_ashi)が、本書は「アルコール依存症の当事者が書いた本」として読む価値がある。

ただし、あくまで「当事者が書いたエッセイ」であり、医療・医学とは一線を画す。治療者としての治療や、当事者としての生きかたのヒントにはなるが、あまり知識のない当事者や家族がまるっと鵜呑みにするのは良くない。

著者の主治医の言葉がイイところを突いている。
これも先生の言っていたことなんだけど、「ある中さんっていうのは、旅行に行くのでも、テレビを観るのでも、あるいは音楽を聴くのでも、全部酒ありきなんだ」と。だから、音楽を楽しんでいるつもりなのかもしれないけれど、酒の肴として音楽を享受している。そういうところを改めないといけないから、これは、飲まないで聴く音楽の楽しみ方を自分で考えないといけないよ、みたいなことを言われました。
俺自身、旅行に行くのは美味しい酒が楽しみで、テレビは観ないが映画は酒を飲みながら、音楽も「ジャズの生演奏を聴きたいな、酒でも飲みながら」といったぐあいに、なんでも「酒ありき」「酒の肴として」という思考に陥っていた。非常に納得のいく話である。

また、著者が断酒生活をダイエットと比較して語るところも大いに頷けるものであった。
減量で厄介なのは、食べるのを我慢すると必ず痩せるわけなんだけど、酒と一緒で、何かを我慢している人生って、本当の人生じゃないということです。
少なくとも主観的には、減量中の人生はニセモノの人生です。
(中略)
とにかく四六時中カロリーを意識しつつ、「俺は我慢してる」ということを常に自覚しながら日々を暮らしていく生き方は、あまりにもくだらない。
十キロ減を達成した瞬間に、自分はいざとなったら十キロ痩せられる、ということが立証されるでしょ。その立証の瞬間に、今までしてきたくだらない我慢にうんざりしてしまい、しばらく好きなものを食べようというマインドセッティングに切り替わるわけです。でもって、そうするとちゃんと太るんです。つまり、そういう意味で、難しいのは、痩せている間にずっと我慢してやっていた食べ方を、痩せた以後もごく自然に続けていけるような人生観を発明して、その人生観を自分の中に定着させることです。
「我慢している」という設定だと、一生我慢することになります。
(中略)
酒をやめるのも、単純に「オレは酒を我慢しているんだ」って話だと減量と一緒で半年しかもたないはずです。そうじゃなくて「酒がない代わりにオレはこれを始めたぞ」と、酒以外の何かで、自分の人生を再構築するプランニングは再発明することですよね。
いささか長い引用になってしまったが、それくらいこの部分に関しては強く賛同する。

玉石混交のエッセイだが、治療者は一読しておいて損はないだろう。

2019年4月5日

今シーズンの映画ドラえもんを絶賛する人には読まれたくないレビュー 『映画ドラえもん のび太の月面探査記』

妻と小1長女、4歳次女、2歳三女の5人で観に行った。

ちまたの評判はけっこう良いが、俺も妻も「???」。

脚本は小説家の辻村深月。ネームバリューがありすぎて、映画に詳しい人がアドバイスできなかったのかなという印象。

映画は「省略の芸術」だ。本作は詰め込みすぎて間延びしていて、映画館では飽きた様子の子どももちらほらいた。子ども向けの映画で1時間51分はちょっとね……。

映画がDVDになるときノーカット版が出ることもあり、それを観ると、いかに劇場版がギリギリまで削っているかが分かる。そして、たいていの場合、劇場版が断然面白い。

ノーカット版は、劇場版でハマった人が趣味で観るのには良いが、ただ映画を楽しむという目的なら、間延びしない劇場版を勧める。

たとえば『ニュー・シネマ・パラダイス』。イタリアで上映された「オリジナル版」が155分。これは興行成績が振るわず、123分に短縮して国際公開すると大成功した。この名作を観ようとレンタル屋に行くと、173分のディレクターズカット版しか置いておらず、その間延び具合にゲンナリしてしまった。

他にも劇場版より長いディレクターズカット版を観たものはいくつかあるが、あんなに好きな『ロード・オブ・ザ・リング』でさえ退屈してしまった。

いままで観たディレクターズカット版で面白かったのはロメロの『ゾンビ』だけ。これはきっと俺がかなりのゾンビ好きだからだろう。

さて『ドラえもん』の話に戻ると、今回は「お約束」なはずののび太やジャイアンの活躍が非常に薄い。ダメっ子のび太やいじめっ子ジャイアンが、ピンチのときに見せる普段とは違う姿に胸打たれることが多いのだが、ちょっと拍子抜けしてしまうくらいに「いつもの彼ら」の枠を出ていない。

俺は少し期待しすぎてしまったようだ。

子どもらは「ドラえもん」というだけで楽しかったらしい。本当は星1つだが、子どもらに免じて1点をプラスしておく。

2019年4月4日

阪急ブレーブスと北朝鮮 『勇者たちへの伝言 いつの日か来た道』


かつてあったプロ野球チーム「阪急ブレーブス」と北朝鮮がメインテーマとなったノスタルジック・ファンタジー小説。

著者は放送作家というだけあって、文章は読みやすく、展開も飽きさせないし、充分に面白かったのだが、Amazonレビューの高評価ほどではないと感じた。

2019年4月2日

読む人たちの写真集 『読む時間』


アンドレ・ケルテスが、世界のあちこちで撮影した「読む人」の姿を集めた写真集。
そこに写っているのは読むことに没頭している人たちで、それはつまり、本が好きな俺の姿であり、あなたの姿でもある。

2019年4月1日

娘たちが20歳になったら読ませたい!! 『人生は20代で決まる』


この本に20歳前後で出会えた人は幸せだ。
せめて30歳までには読んで欲しい。
そんなことを書いている43歳の俺も、読んで良かった。
もちろん娘たちにも、20歳になったら読ませたい。

仕事や学業について、かなり手厳しいことも書いてある。そこだけ切り取れば、職業差別、インテリの尊大さとさえ感じられるかもしれない。でも大丈夫。この本を読もうとする人なら、それが厳しくとも的を射た指摘であると理解できるはずだ。

人生は有限で、20代は10年間しかない。そして、その期間をどう生きるかは、あなたの未来を決める。無責任な「20代は好きなことをやれ!」といった本ではない。だからこそ、読む価値がある。