2012年5月1日

ヤクザ患者のメンツをつぶさない

「ヤクザが怖くて精神科医なんてできるか」

とは、前の勤務先病院の副院長の言葉。副院長はそう言うけれど、やっぱり怖いものは怖い。睨まれながら荒い言葉で凄まれると、ひぃっとすくみ上がってしまう。ところが、元ヤクザの幹部であった患者の主治医をしているうちに、だんだんと慣れた。確かに、怖がっていても仕方がない。

さて。

ヤクザといわれる人たちはメンツを非常に大切にするそうだ。ヤクザ、元ヤクザが入院してきて問題を起こした場合の対処法を、副院長から二つ教えてもらった。

1.病棟内でヤクザ同士がケンカになった場合
「このケンカは俺に預けろ」
どちらが良いか悪いか、どちらが勝ったか負けたかを問題にしない。ヤクザは引くに引けない人たちだから、誰かに預けることでメンツが保たれる。

2.ヤクザが暴れた場合
大人数で囲む。例えば4人で抑えられるような状況でも、その倍の8人で囲む。そうすると、
「俺一人を抑えるのに8人も集まった」
と自分の中での武勇伝ができ、メンツが保たれる。実際、受け持った元ヤクザ幹部の患者は、大人数で囲むと表情が柔らかくなり、
「ヘッ、ザコどもが」
と笑って大人しくなった。これを、“諦め”と解釈するか、“メンツが保たれた”と解釈するか、人それぞれだろうなぁ。

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