2012年5月23日

研修医時代にしか学べないこと

指導する学生や研修医には、必ず伝えていることがある。

「研修する科で、先生たちの他科に対する愚痴をよく聞いておけ」

研修を終えて専門科を決めると、先輩医師からの厳しい指導はあっても、他科医師からの直接的批判はなかなか受けなくなる。だから、そういう垣根のない研修医のうちにいろいろな科で愚痴を聞いておくのは大切だ。

「これくらいで紹介してくるなよ」と嘲笑の混じった愚痴と、「なんでこんなになるまでほっといたんだ」と憤りのこもった愚痴を聞くことで、自分がどの科に進むにしても、相手の守備範囲はこのあたりなのかなと見当がつく。

また、「この病気を疑って紹介するなら、せめてこの検査くらいしとけよな」と呆れた様子の愚痴もあるし、「この検査するくらいなら、もっと突っ込んでここまで検査しないと……、結局、患者に2回きつい思いさせるだけじゃないか」という苛立った愚痴もある。

これらの愚痴をスルーせずに受け止めておけば、「笑われず、憤らせず、呆れさせず、苛立たせない紹介状」につながるし、ツボを押さえた紹介をしてくる医師は、他科からも一目置かれる。

各科を数ヶ月研修したくらいでその科を完璧に学ぶなんてことは不可能だけれど、たくさん愚痴を聞くことで得られるものは凄く大きい。逆の立場で言うなら、各科の指導医や先輩医師は、他科の悪口や愚痴をたくさんこぼしてあげたほうが、その研修医の将来につながるということだ。ただし、その研修医に「愚痴から学ぶ」という姿勢がない場合には、「なんか俺の指導医、他科の悪口と愚痴ばっかなんだよなぁ」と言われてしまう恐れがあるけれど……。

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