桐野の本は何冊か読んだが、俺にとっては当たりハズレがあって、一番の当たりは『魂萌え!』だった。この本は当たりのほうに入るが、読後感はあまり良くない。まぁ内容が内容なだけに、そりゃそうだ。
本書のamazonの宣伝文句を引用しておく。自分は少女誘拐監禁事件の被害者だったという驚くべき手記を残して、作家が消えた。黒く汚れた男の爪、饐えた臭い、含んだ水の鉄錆の味。性と暴力の気配が満ちる密室で、少女が夜毎に育てた毒の夢と男の欲望とが交錯する。誰にも明かされない真実をめぐって少女に注がれた隠微な視線、幾重にも重なり合った虚構と現実の姿を、独創的なリアリズムを駆使して描出した傑作長編。柴田錬三郎賞受賞作。
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