読書は好きでも、本をコレクションする感覚はないという人も多いだろう。そもそも、本好きとただの読書好きでオーバーラップする部分はあるが、決定的な部分で違いがある。それは、ただの読書好きには、本や活字、あるいは本の持ち主や筆者に対する敬意がない、あるいは少ないということだ。
「筆者に敬意を払うのは分かるけれど、本や活字、ましてやその本の持ち主に敬意を払うなんてどういうこと?」
という疑問はよく分かるが、それに答えるのは難しい。なぜならそれは、本好きが持つ感性の問題だからだ。俺がフィギュアについて熱く語られてもいまいち分からないように、本好きでない人が本について熱く語られてもピンとこないだろう。
それでも敢えて、本好きとはこんな感じだということを書いていこう。
中学時代、大切にしていた6巻シリーズの文庫本がある。何度も繰り返し読んだ。普段は表紙をつけて蔵書しておき、読む時には表紙をはずした。その本を友人が貸して欲しいと言ってきたときには正直イヤだったが、貸さないわけにもいかなかった。表紙をはずして貸すのも悪いと思い、渋々表紙をつけて貸した。返ってきた本を見て愕然とした。表紙の一部が破れていた。その時には文句は言わなかったが、続編を貸すときには表紙を外して渡した。戻ってきた本は、本のとびらが折れていた。ごく小さなもので、角を頂点とした1辺1.5センチの直角二等辺三角形くらいだったが、もう抗議をしないわけにはいかなかった。彼のところへ行き、ここが折れているではないかと指摘した。彼は謝りもせず、薄ら笑いを浮かべ、はいはい、と言って俺から本を取ると、手で雑にアイロンをかけるような仕草をして本を手渡してきた。当然のことながら、そんなことで紙の皺が直るわけがない。同級生男子が10人しかいない田舎の学校だったが、卒業後は彼と一度も会話していない。する気が起きないからだ。
この話には、多少なりとも共感してもらえる部分があるかもしれない。何であれ大切なものを人に貸して、それがそのままの状態で返ってこないというのは哀しいものだ。ではこれはどうだろう。
20歳の頃、大学の友人の家に遊びに行った。部屋には彼が勉強している資格試験の本が散乱していた。俺はそれらを踏まないように歩くのだが、彼は一向に気にせず、時に踏みつけ、また蹴り飛ばしたりもしていた。「本を踏むな、蹴るな」と言ったが、あまり伝わらなかったようだ。自分の本でもないのに、大切にされていないのを見ると辛くなる。こういう感覚は、集めるものは違ってもコレクター同士なら相通ずるだろう。
そんなコレクターの感覚など分からないかもしれないが、せてめ本を借りる時の作法くらいは知っておくべきだ。それは何も難しいことではなく、ただ常識として、人から借りたものは、なるべく借りた時と同じ状態で返すということを心がけるだけだ。ただ、やはり感性の違いがあるだろうから、具体的に書かないと分からない人も多いだろう。俺が人に本を貸す時には、口には出さないが、最低限、以下のことに気をつけて欲しい。
1.本にしおりを挟むことを面倒くさがって、開いたまま伏せることは絶対にするな。本に開きグセのようなものがついてしまう。
2.たばこの煙を本に吹きかけるな。意外に臭いがしみつく。それに焦がしたらどうするんだ?
3.その本の持ち主が、本の内容だけでなく、本のとびらやページを含めた本全体を大切にしていることを忘れるな。
4.借りた本は返せ。
あなたにとってはただの本でも、持ち主にとっては身銭を切って買って、読み終えた後もコレクションとして持ち続けている大切な本であるということを、絶対に忘れないで欲しい。
「人から本を借りる時の作法」に無頓着な人が多くて困る。まず借りた本は丁寧に読むのが当たり前。本にしおりをせずに開いて伏せるなど論外。そして人として最低限のルールは、借りた本は返す。あなたにとってはただの本でも、持ち主にとっては大切な本だから、自ら買って所有しているのだ。忘れるな。
— いちは (@Willway_ER) October 8, 2013
僕も本好きなので痛いほどよくわかります。
返信削除>マツゲンさん
削除本好きにしか分からない本のあれこれってありますよね。
数年前に購入した雑誌を読んだ友人が、同じものを求めて書店に行ったことがあります。つまり新刊だと思われた。その人が読んだあとは即古雑誌になりました(笑)。
返信削除>りーふさん
削除あー……、なんだか辛いですね。
同意権です。
返信削除誤字
削除同意見でした。
>なおこさん
削除本を大切にする人にしか分からない感覚ありますよね。