2016年10月4日

安さの裏にある犠牲に気づけ! 『ウォルマートに呑みこまれる世界』


日本ではあまり有名ではない(?)ウォルマート。アメリカでは系列店を4000店舗以上も展開し、あらゆる業種を含めてアメリカ一の売上高を誇る企業である。ちなみに日本では431店舗(平成28年10月3日時点)もあるが、田舎暮らしの俺は一店舗も知らない。

さて、そのウォルマート、とにかく安さ重視。本書冒頭の逸話が面白かった。かつてアメリカでは、制汗剤が箱に入れて売られていたが、ウォルマートが製造業者に「箱なし」で作るよう注文をつけた。どうせ箱はすぐに捨てられるし、そもそも購入者は必要としないだろうと考えたからだ。箱を作らないぶん、製造コストは下がる。その浮いた利益の半分は製造業者がもらい、残り半分をウォルマートがとる、のではなく顧客が受ける。つまり安くなる、ということ。

これはすごく納得のいく話であり、かつウォルマートが「顧客のための値下げ」に真摯であることの証明のように見える。しかし、それから時代は進み、ウォルマートはアメリカ一の大企業になった今でも値下げを追求している。それは製造業への締めつけにつながり、悪影響はそこで働く人たちの生活に及んでいる。特に海外、発展途上国の工場は職場環境が悪いことが多く、低賃金で、国によっては児童労働さえも行なわれていることがある。

こういうことを知ると、日本はどうなのだろうかと考える。100円均一、子ども服の西松屋やバースデイ、その他の安い商品は、どこの国のどんな環境のもとで、どういう人たちが働いて作ったものなのだろう。誰かが搾取されているのだろうか。それとも、そんなことは心配のしすぎで、みんながハッピーなWIN-WINの関係なのだろうか(とてもそうとは思えないが)。

誰かが泣きながら作った食材を、我が子に食べさせたいとは思えない。誰かが悔しさを噛みしめながら縫った洋服を、我が子に着せたいとは思えない。先進国に生きる我々は、自分たちが購入する安い商品が、どこでどう作られているのかに少しだけでも注意を向けるべきなのだろう。

翻訳は非常に読みやすかったし、ウォルマートの野心的な活動・発展ぶりにも興味がもてたし、また安さの裏に何があるのかを改めて考えるキッカケにもなった。以前に読んだ『ファストフードが世界を食いつくす』もテーマは同じだ。両方ともすごく良い本でオススメ。

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