朱川湊人の長編小説で、今よりちょっとだけ未来の話。オゾンホールを修復する化学薬品にまつわる話だが、薄く「終末世界」の要素が入っている。世界が終わりかける時の話は、自分でも小説を書いてみたくらいで、けっこう好きだ。この手の話では、伊坂幸太郎の『終末のフール』や、有川浩の『塩の街』があって、どちらも凄く面白くてお勧め。で、本書であるが、あと一歩の惜しさを感じてしまった。
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自分は少女誘拐監禁事件の被害者だったという驚くべき手記を残して、作家が消えた。黒く汚れた男の爪、饐えた臭い、含んだ水の鉄錆の味。性と暴力の気配が満ちる密室で、少女が夜毎に育てた毒の夢と男の欲望とが交錯する。誰にも明かされない真実をめぐって少女に注がれた隠微な視線、幾重にも重なり合った虚構と現実の姿を、独創的なリアリズムを駆使して描出した傑作長編。柴田錬三郎賞受賞作。