理想は人生航路を照らす灯台だが到達点ではない。灯台により航路が照らされ、自分の位置がわかる。しかし、灯台に近寄りすぎると船は難破する。灯台から遠く離れている時は灯台が一時的な目標として役立つ。近くに行くと、遠くに他の灯台が見えてきて、その先の航路を示してくれる。自己啓発本にハマっていた時期がある。17歳から21歳くらいか。20歳のころ、『こころの処方箋』という本を読んだ。河合隼雄という臨床心理士の書いた本だ。そして、ちょっとガッカリした。当時のガツガツしていた俺にとっては、拍子抜けというか、もっと魂を熱く揺さぶられるようなものが欲しかったのだ。
あれから15年以上が過ぎた今。精神科医となって読みなおしてみた。20歳の俺が見ていた灯台と、いま目指している灯台とは違うのだから、この本の受け取り方も違ってくるだろうと期待して。そしてその通り、今度は、少しちがった視点というか、読み方ができた。
自分の中のなにかが、この本を受け容れる状態になったのだろう。
「人生なんて、100点をとらなくても良い」
そんなことを甘く考えているだけの人に一言。
人生には時に「100点以外はダメな時がある」。常に80点の努力を続けてきている人の「平均点」は人並み以上どころか、大変に高い。ところが100点以外はダメ、という時も80点をとっていてはダメなのである。ここぞという時100点をとっておけば、それ以外は60点で良いのだ。
心の中の勝負は51対49。これは僅かの差である。しかし、多くの場合、底の方の対立は無意識の中に沈んでしまい、意識されるところでは2対0の勝負のように感じている。これの言わんとするところは、説明すると長いので本書を読んで欲しい。なるほどなぁと思わせられる。そして、診察室での余裕にもつながる。逆に、緊張感にもつながる。
サッカーの勝負だと、2対0なら完勝である。従って、意識的には片方が非常に強く主張されるのだが、その実はそれほど一方的ではないのである。
「努力によってものごとは解決する」と単純に考える人は、「解決」の方に早く目がゆきすぎて、努力に腰がはいらない。野球の守備で併殺をしようと、ちらりと走者を見たばかりにエラーをしてしまうのとよく似ている。大事なのは、まず球を受けとめることなのだ。努力しなければ良いのかというとそうでもない。じゃどうすれば良いんだよ、と思う人もいるだろう。そんな人への処方箋が、本書の中にある。
人生では、このようなミスに気づかず、努力しても報われないと嘆くことになる。
Ciao Willwayさん
返信削除あ、あのね
私河合隼雄さんだめです
もっともなことをおっしゃってるんだろうがーー
なぜか心に喰いついてこないし、響きもしないの 苦笑
>junkoさん
返信削除分かります、その気持ち。
俺も数冊読んだ後は、もう響かなくなりました(笑)
「俺も数冊読んだ後は、もう響かなくなりました(笑)」
削除それはもったいない(笑)
>匿名2017年6月19日 20:04さん
削除読む分野、というか、河合先生の本の中でも読んだのが偏っていたから、そうなったのかもしれません(^_^;)
村上春樹と河合先生の対談の本は、意外と面白かったですw
返信削除(2冊くらいあったかな。どっちも文庫で読んだ記憶があります)
ちなみに、京大出身の研究者の方だったか、隼雄先生よりお兄さんの講義の方が面白かったとツイッターでおっしゃっていた人がいましたね…w
(河合先生の御兄弟やそのお子さん方って、ほんと、錚々たる研究者ぞろいで凄いですwww)
>匿名2015年1月25日 20:05さん
削除村上春樹、食わず嫌いなんですよねぇ、なんでだろう……?
研究者一族に限らず、優秀な人を多く輩出する家系ってありますね。そういう遺伝子なのか、それとも経済力を背景とする土壌があるのか。実際には療法なんでしょう。