私ね、時々こうやって窓から道を見下ろすの。
ほら、車が見えるでしょ?
信号待ちしてる。
私ね、ヘッドライトよりテールライトの方が好き。
ヘッドライトは明るすぎるから。
ヘッドライトは前ばかり照らして、
後ろの人のことなんかちっとも気遣わない。
でも、テールライトは違う。
テールライトは、優しいよね。
あ、青になった。
ほら、信号が。
私ね、止まってる車のテールライトが好き。
走ってる車のテールライトはすぐに通り過ぎちゃうでしょ。
ロウソクの炎みたいに、小さくて、ちょっとだけ暖かくて、
そんな優しいテールライトが、ずっとずっと止まっていてくれたら、
そしたら私、ずっと優しい気持ちでいられる。
うん、きっと。
そんな、気がするの。
アイツはヘッドライトだった。
それも、走ってる車のね。
自己主張が強くてさ、いつも前ばかり見て、
後からついていく私のことなんか、きっとあまり気にしてなかった。
でも、あんなやつでもね。
ううん、違う、そうじゃないね。
こんな私でもね、こんな私でも、
ほんの一瞬だけだったけど、
アイツのヘッドライトに照らされてたんだ。
強くて、明るくて、まっすぐで。
まぶしくて、まぶしくて、まぶし過ぎて、
目をつぶってる間にヘッドライトは通り過ぎちゃったけどね。
泣いてない。
泣いてないよ。
泣いてないってば。
あんな奴のことなんか、もう気にしてないから。
どこかに、どこかにきっとね、私だけのテールライトがいるの。
ヘッドライトじゃなくて、テールライト。
永遠に青にならない信号。
そこで、ずっとずっと、私を、私だけを照らしてくれるテールライト。
優しく優しく暖めてくれる。
そんな、テールライト。
テールライト。
テールライト。
でも。
やっぱり。
もう一度だけ。
ヘッドライトに照らされたい。
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