ハラスのいた日々
人と犬との縁というのも、考えてみると実にふしぎなもので、ある意味では人間どうしの出会い以上にふしぎかもしれない。犬なんてみな同じようなものだと、前は思っていたが、あとになってみればその犬以外の犬ではだめだという、かけ替えのない犬になっているのだから。これは冒頭の最初の一文である。のっけから、一気に引きこまれる本であった。
我が家の太郎との最初の出会いはペットショップで、そこには同じ母親から生まれたメスも一緒にいて、どちらかと言うまでもなく、明らかにメスのほうが美形であった。欲しかったのは男同士(?)で分かり合えそうなオスであったし、ビーグル犬を扱っている店は県内にそこしかなかったこともあって、なんだかブサイクだなぁと思いつつ、その“ブ”ーグル犬を相棒とすることに決めた。それが去年の三月のことである。
自分が先に島に引っ越して、太郎が届くのを待ちに待った。飛行機でやって来た太郎は、その後、ご飯を食べない、熱は出す、極度の貧血になりバベシア疑いとなるなど、とにかく肝を冷やすことが多かった。それも乗り越えると、めきめきと元気になり、走り回り、飛び跳ね、食べ、吠え、笑い、まさに、「あとになってみればその犬以外の犬ではだめだという、かけ替えのない犬」になったのである。
美談や感動話ではなく、本当に犬とのささいな日常生活が綴ってある。犬が好きな人なら、読んでぜったいに損はなし。
ずいぶん前にラジオで朗読してました。
返信削除(入院していたわけでもないのになぜ聞いたのだろう)
「ハラス」、鮭の腹身が好物なので覚えています。
清貧の思想も書いた作家ですね、読んでみようかな。
>佐平次さん
返信削除犬好きな方には、これはお勧めですよ。
朗読を聴かれたのなら、二度目になってしまうかもしれませんが、
それでも胸打たれたり、分かる分かると思ったりすること請け合いです。