太古の昔より破壊の神として畏怖されていたTARO。
時代や地域によって、ターロ、あるいはタロと称されてきたこの神のことを、ここでは、現代のこの場所において一般的であるタロウと呼ぶことにする。善なる神の島に封じられて以来、タロウの牙は仔犬ほどに小さく、爪もできそこないの真珠のように鈍く輝くのみであったが、徐々に内なるちからを研ぎ澄まし、遂に解き放たれる時がきた。
タロウが最初に矛先を向けたのが、封印の要めであるアミードであった。人間によってこしらえられたアミードは、幾重にも張り巡らされた細い糸でもって、タロウが神殿に入ることを阻むという憎々しいものである。アミード封印の向こう側には、さまざまな壊しがいのある物々が横たわっており、タロウが存在し始めた時から持ち合わせた破壊の衝動性を刺激する。昂ぶる精神を一点に集中し、ついにタロウはその眠れる力を爆発させた。
そして、アミードは打ち破られた。
引っかき、噛みつき、また引っかく。
タロウは単調な行動の一つ一つに、燃えたぎる魂を込めた。どこからか、アミードを祭る者(飼主とも称される)の絶叫とも嘆息ともとれる声が聞こえてくる。その声は、タロウのうちに充満した燃料のような情熱に火をつけた。戦いが終わり、アミードは屍となり、それを虚(うろ)のような目で眺めていた祭者は、溜め息とともにアミードを神殿奥にしまった。
この島での最初の戦いに、タロウは勝った。
だがしかし、決してこれで終わりではない。この神殿には三ヶ所のアミードがあり、残り二つはいずれも無傷のままだ。そして、小封印であるアミードを破ったとしても、大封印のマードがある。マードは、タロウがいかに爪や牙を剥こうとも、なめらかな表面に傷一つつけられない。それでもマードへの攻撃をやめないのは、破壊神としての誇りと意地だ。
ともあれ、タロウは一つの戦いに、勝利をもってして終止符を打った。破壊神の勝利は、タロウと同族である数多の破壊神、そして破壊神を畏怖する人間たちから、いつの時代でも、いかなる地域であっても、次のように呼ばれてきた。
イタズラ。
次なるイタズラに破壊の想いを馳せながら、タロウはゆっくりと眠りにつくのであった。
『破壊神TAROの御姿』
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