本書のタイトル『病を癒やす希望の力』は、希望を持つだけで病気が治ってしまうと思わせるようなものだが、これは著者の意図とはまったく違う。
確かに著者は患者が希望を持つことは大切だと述べている。また医師や看護師が患者に希望を持たせるための言動についても詳しく書いている。ただの楽天主義ではダメであり、また患者に病名を知らせなかったり経過や予後に関して嘘をついたりして「偽りの希望」を与えることにも異を唱えている。
ではどういう希望が良いのか、そのあたりの詳しいことを知りたい人には本書を読んでもらおう。不治・難治の病気を抱える人と関わることの多い医療者にはぜひ読んでみて欲しい一冊である。
医師は、手術や処方を間違うのと同じように、患者への言葉かけでも間違うことがある。これは著者が自分自身の臨床経験と、自分が患者として体験したことから痛感したことである。この非常にシンプルな一文が、俺にはずしりと重かった。医療者として決して疎かにしてはいけないことだと思う。
本書の原題は『The Anatomy of Hope』。これを『病を癒やす希望の力』という邦題にした出版社は、本書の意図をはき違えているのか、それとも代替医療やヒーリング大好きな人を購買層に入れるために敢えてこういうタイトルにしたのか……? きっと後者なんだろうなぁ……。
これを本当に読むべきは、医療者である。
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