2016年5月16日

松井秀喜に対し、5打席連続敬遠という策で勝負した明徳義塾の「正々堂々」を心底から支持したい 『甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実』


松井秀喜が甲子園で5連続敬遠されるのを、松井より一学年下の俺は生放送で観ていた。テレビを観ながら高校の宿題をしていた俺は、敬遠に対するブーイングや試合後の帰れコールに対して腹が立って仕方がなかった。

スポーツと勉強。

分野はまったく違うけれど、甲子園も受験も、同じ高校生が一生懸命にやった成果をぶつけ、勝利や合格を奪い合う場である。当時の俺は、学校の方針で寝る間もないくらいに勉強させられていた。だから、あのブーイングや帰れコールが自分自身に向けられているかのような、そんな錯覚すら抱いた。

ルールに則った真剣勝負に対して、周りの連中がブーイングや帰れコールをする資格なんかない。お前らのくだらない価値観や倫理観で、俺たちの必死の戦いに水をささないでくれ。俺たちは、いや、俺は、なんとしてでも勝ちたいんだ。そのために、今この瞬間も、遊び呆けている奴らを横目に勉強しているんだ。この努力は、勝つためのものなのだ。そんな憤りをたぎらせた。

松井の敗北から一年後、俺は九大経済学部に現役合格した。松井は甲子園では勝てなかったが、俺は受験で勝った。つまり、誰かを蹴落とした。誇らしげに胸を張りながら、誰かが座るかもしれなかった合格のイスを奪ったのだ。正々堂々と5連続敬遠という勝負をした明徳義塾と俺の間に、大きな差はない。

あれからもう20年以上が経つ。松井はメジャー・リーガーとしても成功し、俺は紆余曲折して精神科医になった。

本書を読んで、当時のことを思い出すと同時に、選手や監督の苦悩や葛藤、あるいは楽観的な考えなどを知ることができ、とても面白かった。

ただ、文章そのものは読みやすいのだが、構成に若干クセがあって、読みにくさを感じるところもあった。全体的には大満足。

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