2017年6月21日

感動なんてない。ただひたすらの悲哀、憤り、虚無 『津波の墓標』


『遺体 震災、津波の果てに』では、東日本大震災後における遺体安置所でのエピソードを中心に描いてあった。本書では、筆者が当時取材したが文章化していなかったものを記録してある。

中身は、暗澹とした気持ちになるような話ばかりだ。

木の枝にぶら下がっている母親の遺体を見上げる男の子。魚に食べられた遺体を見て以来、魚を食べられなくなった小学生。派遣された自衛隊隊員をアイドルのように感じる若い女性被災者たちと、もてはやされる隊員たちに苛立ちを感じる若い男性被災者たち。どこそこに幽霊が出たと聞くと、自分の家族の霊かもしれないと思って一斉に駆けつける人たち。ピースサインで写真を撮るボランティア、彼らに憤然とする被災者。若い女性ボランティアの体を触るなど理不尽な行為におよぶ被災者。被災地に残る夫、去っていく妻。

マスコミで取り上げられる感動的な復興エピソードの裏には何十万もの悲哀があり、同じだけの憤り、虚無があり、そしてギスギスドロドロとした人間模様がある。そうしたことが赤裸々に語られる。涙よりも、ため息を呼ぶ、そんな本である。

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