スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫が、『風の谷のナウシカ』から『思い出のマーニー』まで、主に宣伝にまつわる裏話を紹介している。
ジブリのデビュー作であり、名作かつ代表作と言っても良いであろう『風の谷のナウシカ』は、実はタイトルが『風の戦士ナウシカ』になるかもしれなかったという話。いまとなっては『風の谷のナウシカ』以外に考えられない素晴らしいタイトルと思えるが、当時は大まじめに議論されたらしい。
ファンが多く、妻も大好きな『魔女の宅急便』は、ヤマト運輸の出資ありきで始まった企画だった。「なるほど、だから『宅急便』なのか」と思いかけたが、そもそも角野栄子による児童文学『魔女の宅急便』が原作である。
この映画に関して、さすが宮崎駿だなと思うエピソードがあった。ヤマト運輸の幹部らとの初顔合わせで、宮崎は、
「タイトルに宅急便とはついていますが、ヤマト運輸の社員教育のための映画を作るつもりはありません」と宣言したそうだ。今でこそアニメ映画界の大御所・宮崎駿という感じだが、『魔女の宅急便』はまだジブリ5作目で、ジブリも現在のような絶対不動の王者ではなかったはずだ。その時点でここまで言い切るところがスゴい。というより、そういう気概があるからこそ、現在の高みにまでのぼれたのだろう。
俺自身が大好きな映画『千と千尋の神隠し』の裏話も面白い。鈴木敏夫が宮崎駿から最初に聞かされたストーリーは、「名前を奪われた千尋が湯婆婆を倒す。しかし、その背後にはもっと強い銭婆婆がいた。千尋はハクと二人で銭婆婆をやっつける」というものだった。うわー、まったくもって面白くなさそうだ。聞かされた鈴木もピンとこない。そんな鈴木の様子を見た宮崎駿は、その場ですぐに新しい案を考える。
「あ、そうだ! 鈴木さん、こいつ覚えてる? 橋のところに立ってたやつ」そう、カオナシである。ここから一気に映画の雰囲気が変わって、あの名作が誕生! と思いきや、話はもう少し続く。
映画の内容が決まったので、宣伝もカオナシを最大限に使っていく方針とした。そのことを宣伝関係者に伝えると、みんな怪訝そうである。
「え? なんで? 千尋とハクのラブストーリーじゃないの?」
という感じ。挙げ句、普段は宣伝に興味を示さない宮崎駿までが、わざわざプロデューサー室までやってきた。
「鈴木さん、なんでカオナシで宣伝してるの?」これには思わず吹き出した。
「いや、だって、これ千尋とカオナシの話じゃないですか」
「えっ!? 千尋とハクの話じゃないの……?」
宮さんはショックを受けた様子でした。
こんな感じで映画の制作順にジブリ裏話が描いてある。ちゃんとジブリ映画を観たのは『ハウルの動く城』が最後だったので、後半にいくにしたがって面白さは減退していった。映画を観た人なら、きっとすべてを楽しく読めるのではなかろうか。
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