ハーバード大学教授のアリスが若年性アルツハイマー病を発症するところから物語は始まる。とても素晴らしい認知症小説で、映画化もされ、大ベストセラーになるのも頷ける内容だった。
診断を受け、症状が進みつつあるアリスの気持ちが読んでいてとてもつらい。
癌にかかればよかった。いますぐにアルツハイマーと癌とを交換したい。こんなことを願うのは恥ずべきことだし、不毛な取引だとは思うけれど、空想くらいしてもいいはずだ。癌なら闘うことができる。手術をしたり、放射線治療や化学治療ができる。勝つ見込みがある。家族とハーバードの研究者たちも彼女の闘いを支持し、立派だと思ってくれるだろう。そして結局病に負けてしまっても、何もかも悟ったという目で彼らを見て、さよならと言ってから死んでいける。翻訳者である古屋美登里の訳文もこなれていて読みやすく、専門用語が変に訳されていることもなかった。この人のエッセイもあるようなので、いつか読んでみようと思う。
認知症に興味がある人、身内に認知症の患者がいる人、単純に良い小説を読みたい人。いずれの人にもお勧めできる名著!!
活字が苦手という人には、映画のほうをぜひ。
それから、認知症小説というジャンル(?)でパッと思いつくお勧めを二つ。
ボケることは哀しく、苦しく、ときに滑稽。若年性アルツハイマーの男性を描いた小説 『明日の記憶』
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