2019年7月30日

一般向けとしても良書であるだけに3200円という値段が残念。 『誤診のおこるとき』


味も素っ気もない、ちょっと古臭ささえ感じるカバーである。改訂版前の初版が1980年であるから中身も……、と思いきや、ぐんぐん読み進められる簡潔明瞭な文章と、読み進みたくなる内容の面白さで、あっという間に読み終えてしまった。

初版時の副題は「早まった了解を中心に」であったそうだが、これは今現在も充分に通用するテーゼであるし、敢えて「精神科診断の宿命と使命」に換える必要はなかったのではないかと思われる。

改訂版では大幅に加筆修正をしてあるようだ。改訂執筆当時に70代後半であっただろう著者の山下先生のバイタリティには、ひたすら感服するばかりだ。若手から中堅の精神科医が読むのに適している本で、山下先生も初版の前書きで、
若い精神科医、あるいは精神医学に興味を持つ学生諸君が、休日のつれづれに寝転んだまま一日で読み終えて、翌日からの診療にすぐ参考になる本という難しい課題を念頭に置きながら、この小冊子を書いた。
と述べられているそうだ。医師以外が読んでも充分に楽しめる本であるが、難点を一つ挙げるなら3200円という値段である。これが半額くらいまで安ければ、一般の人たちにまで読者層を広げられたと思うだけに残念。

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